2016年(平成28年7月) 13号
発行所:株式会社 山田養蜂場 http://www.3838.com/ 編集:ⓒリトルヘブン編集室
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あさみ智子さんの「蜂蜜グラノーラバー」
あさみ智子さんの「蜂蜜グラノーラボール」
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|この日、カフェ山猫は休みだった。店の奥の小さなカウンターで小学5年生の娘が夏休みの宿題帳を広げている。何を聞いているのか耳にはイヤホン。厨房に入ると、すでに調理台には大小のガラス器に入った「蜂蜜グラノーラバー」の材料(レシピ参照)が並んでいた。
「いわゆるシリアルバーの一種なんですけど、登山に持って行ったりするお結びみたいなものですよ。私は、これに玄米だとかも入れちゃって、お食事度を高めて霧島山へ行く時に持って行くんですけど。作るのは一瞬で出来ます。一瞬と言っても、計量して混ぜて焼くですね」
料理家あさみ智子さんが、グラノーラバーと聞いてもピンと来ない私のために簡単な説明をしてくれた。
材料の計量が終わると、ドライナッツのアーモンドとクルミを砕かなければならない。今回は機械を使わず、ストックバッグのような丈夫なビニール袋に入れて麺棒で叩いて潰した。「この方法だと、飛び散らないしキャンプの時も使えますよね」。厨房の中に、タンタンタンタンとアーモンドとクルミを砕く大きな音が響き始めた。「砕くのが大変な時は、スライスアーモンドとかを使っても良いですよね」。あさみさんの料理は、厳密さよりも臨機応変であることが大切にされている。
「ナッツを砕いたら、後はもう混ぜるだけですよ。その前にドライフルーツのイチジクを細かく切っておきます。イチジクを入れるとリッチ感も出ますし、お母様方大好きですから。イチジクは、太古から品種が変わっていない原種のままのスーパーフルーツらしいですよ。カブトガニのフルーツバージョンみたいなものですよね。材料を混ぜるのに順番なんてないですよ」
大きめのボールにオートミール2カップ、ココナッツフレークを1カップ、ドライフルーツは好みで1カップ。今回使うのは、クランベリーとグリーンレーズン、それに先ほど刻んだイチジクだ。話をしながら、調理台の上の材料を次々とボールに入れ、混ぜ込んでいく。さらに、豆乳1カップ、蜂蜜1カップ、菜種油を大さじ4杯、岩塩小さじ1杯を混ぜる。
「甘さは蜂蜜だけです。塩は相当入れましたよ。岩塩だから辛くはないですからね。このままギューッと固めてグラノーラボールも良いかも。外はカリカリ中はフワフワかも知れないですね。大さじ一杯ずつ取って球状にまとめる感じ。これにヒマワリの種やカボチャの種などを入れると、色味が可愛いくなるでしょうね。菜種油をもうちょっと入れようかな。バラバラになったら嫌ですからね。オートミールに水分が全部いくんですよね。まだ馴染んでないかも……。15分くらい置いといたら馴染んでくるものなんですよ。小麦粉を繋ぎに少し入れようかな」
材料を混ぜ合わせている間にも、あさみさんの脳裏には次々とアイデアが浮かんで形にしていく。最後に小麦粉を混ぜ合わせると、急にまとまりが良くなってきた。
「フライパン一つでも出来ますけど、焦がしたりして火加減が難しいので、今日はオーブンを使いますね。180℃で予熱します」
耐熱ガラス製の天板にクッキングシートを敷いて、混ぜ合わせた材料をヘラで押しつけるように天板の隅々まで均等に伸ばし、オーブンに入れる。タイマーを20分にセットすれば完了だ。焼きむらが出る場合もあるので、途中で天板の前後を入れ替えてやると良い。
さて、焼き上がったグラノーラバーは完全に冷めてしまうと切る時にボロボロと崩れるので、まだ温かみがあるうちに食べやすい大きさに切っておくことが大切だ。
グラノーラバーを一口食べて、思わず「こりゃ旨いわ」と声に出してしまった。適当な甘みとサクッと口の中で砕ける食感、それに、ナッツと乳製品の香りが口の中にほんのり漂う。乳製品は何も使っていないはずなのに不思議だ。
「豆乳と菜種油を乳化させることで、バターテイストになるんですよね。たぶんそれが乳製品の香りになっているのかも知れません」
あさみさんは、グラノーラバーの甘みとして蜂蜜を使ったのは初めてだと言う。
「普段は、玄米水飴とか米飴だから。玄米飴は、玄米を煮詰めてずーっとコトコト炊いてできるんです。味的には、蜂蜜のように華やかな感じじゃなくて地味。蜂蜜で作ったのは、初めてだから美味しいですね。やっぱリッチやわ、全然違う。これだったらスパイスとか香料が全然要らないですね」
保存食としても携帯食としてもおやつとしても栄養食品としても地味で万能なグラノーラバーが、蜂蜜を使うことで、シンデレラがガラスの靴を履いたように変身するとは驚きだ。
料理家・あさみ智子(ともこ)
1969年京都府生まれ。幼い頃から料理好き。自然を求めて育つ。東京でファッションモデル中心の活動をした後、1994年にオーガニックな環境を求めて、宮崎市へ移住。料理を仕事として、オーガニック関連店の立ち上げに係わり、ケータリングや料理教室をしながら精進し、2006年に玄米菜食.comを立ち上げ、カフェ山猫を始める。
2014年に現在地の綾町に移転。一男二女の母。
① レシピの材料を計量して揃える
② アーモンドとクルミを細かく砕く
③ オートミール、ココナッツフレーク、
砕いたナッツ、ドライフルーツを混ぜる
④ 刻んだドライイチジクを加える
⑤ 豆乳1カップを加える
⑥ 蜂蜜1カップを加える
⑦ 菜種油大さじ4を加える
⑧ 材料全てを混ぜ合わせる
⑨ 混ぜ合わせた材料をボールにする
⑩ オーブン皿にクッキングシートを敷き、
ヘラで押し付けるように伸ばす
⑪ 180℃のオーブンで20分焼く
⑫ 冷める前に好みの大きさに切る
Supported by 山田養蜂場
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