2016年(平成28年9月) 15号

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街の中心部にある総ガラス張りの料理教室。通りからでも大きな調理台が整然と並んでいるのが見える。生徒さんたちが帰った教室に入ると、ジャスティン・ビーバーの「Love Yourself」が小さな音量で流れている。

|「クリームチーズは蜂蜜にすごく合いますね。蜂蜜はですね、甘さだけでなくコク、蜂蜜じゃないと出ないコクがあってですね、チーズと蜂蜜というのはすごく合いますね。そのコクを使って、今日は、和食なんですけど、白和え」

|「おいおい、和食でクリームチーズかよ!」と、茶々を入れたくなるのを我慢していると、吉岡良祐シェフの説明は意外な展開を見せ始めた。

|「クリームチーズと蜂蜜のコクで、白和え衣、豆腐を味付けていこうということです。淡白な豆腐が風味豊かなクリームに変わりますよ。これは、蜂蜜じゃないと駄目なんです。意外な組み合わせなんですけど……」

なるほど豆腐ベースのクリームだから、白和えなのだ。

|「食材は、ほとんど何でも良いんですけど、今回は秋をイメージして季節の柿と巨峰を使ってみます。あと、コクがあるので、豆腐なんですけど、バケットに合わせても面白いかも知れませんね」

|「おいおい、和食でバケットかよ!」と、またまた思う。どうやら吉岡シェフにかかると、和食の既成概念にこだわってはいけないようだ。

|「まずは、フードカッターですね。ミキサーの中に材料を全部入れていきます。順番は関係なく、全部一緒で良いです。家庭でも簡単に作れるように、今日はアレンジしてありますからね」

吉岡シェフは、豆腐120グラム、クリームチーズ60グラム、蜂蜜20グラムを一気にミキサーに入れていく。当たりゴマ15グラムを入れる時の豆知識。

|「これ、当たりゴマって言ってですね。ゴマを当たり鉢(すり鉢)で長い時間擂っていくと、油に変わります。ゴマを油に乳化させたものですね。これを漉して絞ったものがゴマ油なんです。当たりゴマは、ゴマの成分が入ったペーストの状態ですね」

|「味付けは、薄口醤油10ccです。料理を難しくするのではなく、いかに簡単にするかですね。楽しんでもらうことが一番なんです。楽しく、簡単に、美味しくというのが大切ですね。回しますよ」

|材料を全て入れたミキサーのスイッチを入れる。ウィーンとモーターの音が響く。時間にして、20秒余り。

|「ダマができますので、何回か回します。容器の上に貼り付いたのを下に落としますね」

ミキサーの蓋を開けると、ゴマの香りが漂ってくる。「ゴマの香りと蜂蜜のコクですね。ちょっと滑らかな豆腐クリームができますよ」

もう一度、ミキサーのスイッチを入れる。今回も約20秒だ。吉岡シェフが、ヘラに付いたクリームを人差し指に取って味を見る。

|「ちょっと蜂蜜を足しましょうか。蜂蜜の分量を間違ったです。蜂蜜は百花蜜で良いんです。蜂蜜はたっぷり入れた方が美味しいですね。濃厚にしたいですね」

蜂蜜をさらに20グラム加えて、ミキサーを回す。今度は、14秒。

|「今の若い子たちは、豆腐を食べないんですよ。豆腐豆腐してるとですね。味が濃厚な方を好みますね。味が濃いというよりは、コクが濃いというのをですね。うん、だいぶ良くなってきました。当たりゴマと薄口醤油も、もう少し。豆腐の量に対して他の材料が足らなかったということですね」

さらに、ミキサーを5秒だけ回す。

|「木綿豆腐だからということではないです。普段、ぼくらは絹ごし豆腐でやるんですけど、水分を飛ばしてから、これを作るんですね。それじゃ手間が掛かるというので、今日は水分量が少ない木綿豆腐をチョイスしたんですね。クリームはこれで完成です。後は、柿と巨峰の具材をどう盛り付けるかですね。白和えだから、和えるんですね、ソースですね」

吉岡シェフは、白和えのソースをビニール袋に入れ、角を包丁で切り落とした。「絞り袋の代わりにしていきます。混ぜ込んでいくと汚くなるんで、ディップして食べていく感じですね。今回は、ソースが柔らか過ぎたですね。何回もミキサーに掛けたので、クリームチーズが常温に戻り過ぎたんですね。冷蔵庫に寝かせるか、氷水で冷やすと良いですね」

吉岡シェフが、クリームチーズ蜂蜜ソースの上に、皮を剥いた巨峰と柿のスライスを盛り付けてくれた。色づく前の紅葉と木の葉を一枚添えてある。巨峰にソースを纏わせるようにして口に運ぶ。ゴマの香りと蜂蜜のやさしい甘さが印象的だ。ベースになった豆腐の存在は消えている。果物に和えるには少し甘過ぎるかも知れない。デザートのようだ。

|「デザートというより、前菜ですかね。果物の代わりに炊いたカボチャだったりしても良いわけなんです。甘さは蜂蜜の味ですね。野菜にディップして食べるように、現代風白和えという感じでアレンジしてみました」

気が付くと、料理教室に流れるBGMは、ミランダ・ランバードの「Vice」に変わっていた。

吉岡良祐(よしおか りょうすけ)

大阪、福岡の「なだ万」にて修行し、2年前に宮崎にて独立。「Japanese Restaurantりょう」をオープン。カジュアル割烹という親しみやすい中にも、こだわり抜いた料理を提供。県外から通う常連ができるほどの店となった。素材の知識や調理法には常に進化を求め、今なお新しいアイデアでお客の「美味しい」を引き出している。

① 材料を揃え使う量に小分けする

② クリームチーズをミキサーに

③ 蜂蜜をミキサーに

④ 材料を全て入れてからミキサーを回す

 

⑤ 20秒ほど回し、状態を確認する

⑥ 器の上のクリームもヘラで落とし混ぜる

⑦ ビニール袋の角を切り絞り袋にする

⑧ 器に盛り付ける

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