2016年(平成28年11月) 17号

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あさみ智子さんは、まな板に大きめの蕪を置くと、包丁の先を使って鮮やかな緑色の茎の周りをくり抜き、続いて根の部分を平らに切り落とした。

 「料理人にしてみれば、蕪の皮を剥かないんだという感じなんでしょうけど。普通にお水から蕪を蒸します。いわゆる蕪蒸しですよ。お出汁がトロンと掛かって、蕪だけだともの足らないから一品のお皿にしようとすると、ちょっとパスタを添えたりとかね。ほんとはソバの実でやるのが好きなんだけど、ソバの実が全然普及してないから、今日はクリスマスシーズンということもあるのでファルファッレ(リボンパスタ)を使います」

 強火のガスレンジに水を張った鍋を掛け、上げ底をした上にステンレスのザルを載せる。その中に丸ごとの蕪を入れ、岩塩を振り掛けて蓋をする。竹串がスーッと通るくらいまで6、7分ほど蒸すことになる。

 蕪を蒸す一方で、葛粉大さじ1杯と根コンブの粉末大さじ2分の1をボールに入れてカップ2杯の水で溶き、それに押し大豆を浸しておく。

 同時進行で、強火のガスレンジでお湯を沸かして岩塩を一つまみ加え、沸騰したらファルファッレを入れて、8分間茹でる。茹で上がったファルファッレをザルに取り、くっつかないようにオリーブオイルをまぶしておくことを忘れないように。

 しばらくすると、蕪の香りが厨房に漂い始めた。「もう良いぐらいなんです。だって蕪は生でもたべられるんだから。辛みが抜けたぐらいの程度で良いんです。ほんとは生が良いんだけど、ちょっと火を入れてあげると沢山召し上がれますよね。お鍋をすると、大根をいっぱい召し上がれるじゃないですか。冷たい野菜は体を冷やすから、今の季節だと体が受け付けないですよね」

 原木椎茸の生1枚をひと口大に切り、オリーブオイルを敷いた鍋で火を通しておく。

 「先日のスーパームーンのお陰で原木椎茸が上がってきたので、さっそく使いますね。やっぱり満月の時に椎茸はめちゃくちゃ大きくなりますよ。火を通した椎茸の鍋に、押し大豆を浸しておいた葛粉と根コンブの粉末を溶いた汁を入れて、熱を加えます。蒸した蕪に掛ける葛あんを作りますね。そこに、干しパイナップルを一口大に切って加えます。パイナップルは、ほとんど缶詰か生でしょうけど、干しパイナップルがすごく美味しいんです。もうドロドロの葛あんになりましたけど、先ほど蕪を蒸した汁を足して柔らかさを調整しますね。蕪を蒸した汁にも塩味が付いてますから、葛あんの味は火から下ろして最後に岩塩で調えます。加熱中に塩を入れていくと、どんどん味が分からなくなっちゃうんですね。最後にクコの実をちょっとだけ入れます。色合いですね。これは温かい料理ですから、すぐにお皿に盛ります。蕪を真ん中にして葛あんを上からたっぷり掛けます。ファルファッレは添える感じでね。蕪をもっと使ってもらいたいんです。3つ4つ蕪を買っても、お鍋とかにしか使わないと思うんですけど、蕪はすごく良い野菜、地味だけど消化に良いんです。盛り付けたら最後にたっぷりの蜂蜜を乗っけて、ヘンプナッツも掛けます。ほらクリスマスっぽくなったでしょ」

 木皿に盛り付けられた蕪蒸しの葛あん掛けはボリュームたっぷりだ。口に運ぶ前から蕪の香りが漂い、食欲をそそる。蕪の真ん中にナイフを入れ四つに切り分けてから、葛あんを絡めるように口に運ぶ。甘い。見かけは和風だが、味は洋風デザートの感じだ。干しパイナップルの甘さが際立っている。蜂蜜が多すぎたかも知れない。黒コショウを掛けると香りが立って、再び食欲が出てきた。蕪は柔らかくほんのり塩味が効いているため、葛あんとの相性が良く、甘さは気にならなくなった。

 和風でも洋風でもない無国籍の料理だが、あさみ智子さんが言うには「自分の体を形作っているルーツを辿るパワーフード」なのだ。ボリュームたっぷりの蕪蒸しの葛あん掛けだったが、結局、一皿全て戴いてしまった。食べ終わった口の中に、素朴な押し大豆の香りが残り、40年ほど前に亡くなった祖母の顔を思い出させてくれた。

料理家・あさみ智子(ともこ)

1969年京都府生まれ。幼い頃から料理好き。自然を求めて育つ。東京でファッションモデル中心の活動をした後、1994年にオーガニックな環境を求めて、宮崎市へ移住。料理を仕事として、オーガニック関連店の立ち上げに係わり、ケータリングや料理教室をしながら精進し、2006年に玄米菜食.comを立ち上げ、カフェ山猫を始める。

2014年に現在地の綾町に移転。

一男二女の母。

① 蕪の茎の周りを包丁でくり抜く

② 上げ底にした鍋で蕪を蒸す

③ 葛粉と根コンブ粉末を水で溶き、

 押し大豆を浸す

④ 竹串で蕪の蒸し具合を確かめる

 

⑤ ファルファッレを8分茹でる

⑥ 蕪が蒸し上がったら火から下ろす

⑦ 原木椎茸をひと口大に切り火を通す

 

⑧ 干しパイナップルを一口大に切る

⑨ 椎茸の鍋に葛粉と根コンブの汁を入れる

⑩ ファルファッレにオリーブオイルをまぶす

⑪ 木皿に蒸した蕪を置き葛あんを掛ける

⑫ 最後に蜂蜜とヘンプナッツを掛ける

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