2014年(平成26年)10月・2号
発行所:株式会社 山田養蜂場 http://www.3838.com/
編集:ⓒリトルヘブン編集室〒880-0804 宮崎県宮崎市宮田町10-22-203
料理家・藤原奈緒の蜂蜜を使った
「あたらしい日常料理」②
「サケのポトフ」
サケのポトフ
サケの切り身の骨を抜いて、一口大に切る。少しきつめに塩をして30分、できればひと晩も置くとサケの身が締まって良い。
「コンソメとかは使いたくないので、素材から出汁を出したいと思って料理をしています。そうなると調味料と素材が一番大事なんです。サケは、秋に出回りますので、塩サケよりも自分で塩をした方が絶対美味しいですよ」
藤原さんは、素材にこだわることを強調する。
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「ポトフのように野菜から出汁を出したいものに関しては、ジャガイモは芽と傷んだところだけを取り除き、セロリもぶつ切りで、ニンジンは縦に半分にします。基本的には、野菜の皮は剥かない方が、香りが強くて美味しいです。皮とか茎とかを活かしたいと思うと、しっかり手を掛けて作られた野菜がいいですね」
野菜の準備が整ったところで、鍋に1リットル余りの水を入れ、ニンジンとジャガイモを一緒に入れる。この時、粒コショウも数粒入れておく。
「ポトフで大事なのは、煮立たせないこと。グツグツ煮立たせてしまうと、どうしても素材の味が飛んでしまうので、素材に対して気持ち良く火を通してあげることが大事なんですよね。秋の野菜は、ゆっくりお風呂に入れて温めてあげるぐらいの感じで火を通して、鍋の表面が少し波立つくらいの温度で煮ていくと、素材が良い出汁を勝手に出してくれます。それ以外は何も気を付けなくても大丈夫なので、そこだけ気を付けてもらえれば」
ニンジンとジャガイモに火が通って、フツフツとしたところでサケの切り身を入れる。
「あんまり火が弱いと生臭くなるし、逆に火が強いとサケが硬くなって、出汁も味が濁ってしまうので注意が必要ですね。沸騰させると、スープって濁っちゃうんです。見た目が濁ると味も濁ってしまうんです。透明なスープをキープしたいですね」
シメジそれにセロリとカリフラワーを入れ、ブロッコリーの茎のところも皮を剥くと良い出汁を出すので、ここで一緒に入れることにする。
「だいたいクツクツいうぐらい。それ以上煮立てないように、火加減に気を付けてください。蓋を閉めてしまうと煮立ちやすいので、1回煮立ってからは、蓋を開けたり閉じたり、それと火加減で、鍋の中がどうなっているかが大事なんです」
ここで、味を決める。基本は塩だ。
「塩を先に加えてしまうと、後からは甘味が出づらくなったりしますので、スープ類を作る時は、素材に出汁を出してもらってから、味を付けるようにするといいですね。サケと具材の野菜から出汁を出した後に、塩と蜂蜜と醤油を少しという感じで味を付けます。今回は、色んな素材が入って色んな味を出していますよね。そこに蜂蜜が入ることで、魚の臭みが消えるというか、中和されるというのか、味がすーっとまとまります。蜂蜜によって、素材の味が馴染んでくれるんですね。
塩は2つまみ。蜂蜜を大さじ半分くらい。最後に、ブロッコリーを入れて出来上がりだ。
「蜂蜜を入れても甘味は全然感じないんですけど、味がまとまったのが分かりますか。サケにしっかり塩をしてあるので、塩は少し。あと、和風の食卓に載せる場合は、お好みで醤油を足します。香りを加えるぐらいで、ご飯に合う感じになりますよ。シンプルなので、素材と調味料がすごく大事という料理です。あと、煮え方ですね」
サケのポトフ。出来たての熱々を、さっそくいただく。ジャガイモはホクホク、ニンジンはほんのり甘味があって特有の香りが残っている。素材が際立つ優しい薄味のスープだ。その中で、サケの塩味が存在感を示している。
藤原さんのひと言が、ポトフの本質を表現してくれた。
「私、冬はよく作るんですけど、火を入れ直す度に状態が変わっていくじゃないですか。最初は具がしっかりしていて、段々、ジャガイモが溶けていったりとかして、それはそれなりに熟成が進めば進むほど、深みのある味になるんですよ」
出来たてのポトフの熱々は、素材がしゃきっとしていて、青年の味なのだと気付く。火を入れ直す度に、働き盛りの男となり、やがて角が取れ、年を重ねていく自分を受け入れるように熟成していく。ポトフは、人生の味がする。
■ 主な材料
サケの切り身 一口大6枚
ニンジン 4本
ジャガイモ 3個
シメジ 2株
セロリ 1本
カリフラワー 1株
ブロッコリー 1株
蜂蜜(百花蜜) 大さじ半分
塩 少々
醤油 少々
粒コショウ 数粒
①サケの切り身に塩をして具を大きめに切る
② フツフツとしたらサケの切り身を入れる
③ 煮立てないように気を付ける
④ 蜂蜜を大さじ半分加えると味が整う
⑤ 和風にするなら醤油を少し足すと良い
藤原 奈緒(ふじわら なお)
料理家。札幌市生まれ。2004年より東京都小金井市のカフェで、地場野菜を使った料理とケータリングを担当。
2006年に素材の扱い方を伝える「日常料理教室」を開講。2013年に独立し、「あたらしい日常料理」をテーマに料理家として活動。
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