2017年(平成29年9月)27号

発行所:株式会社 山田養蜂場  http://www.3838.com/

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有形文化財の和室で蜜蜂について学ぶ

 名古屋市中村区の中村公園にある「記念館」は、加藤清正公没後300年を記念して明治43年に建築された書院造の国の登録有形文化財である。この由緒ある建物の畳の上に、採蜜のための遠心分離機や巣箱がうやうやしく置かれ、子連れの母親などが20人ほど集まっている。

 中村公園主催のイベント「まちなか緑塾 ミツバチについて学ぶ」が、新海浩二さんを講師に招いて開催されているのだ。所長の鵜飼昌仁さんが「ミツバチ クイズ」を始め、就学前か小学校1年生くらいの男の子たちが目を輝かせて3択クイズに挑戦している。

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    女王蜂は一日に卵を何個産むでしょう

     1問目のクイズは、「はたらきバチはオスとメスどちらでしょう? ①オス ②メス ③りょうほう」とある。子どもたちがそれぞれに正解と思う番号札を掲げる。正解で喜ぶ子と間違えて悔しがる子。2問目は、「はたらきバチのからだのおおきさは? ①約3ミリ ②約8ミリ ③約13ミリ」だ。3問目は、「ミツバチの活動がはじまるのはいつでしょうか? ①はる ②なつ ③あき」。4問目は、「あつい夏に、ハチがさかんにおとずれる花はどれでしょう? ①ツユクサ ②ヒマワリ ③コヒルガオ」。5問目は、「新海さんが飼っているハチのしゅるいはどれでしょう? ①日本ミツバチ ②西洋ミツバチ ③スズメバチ 」。6問目は、「はたらきバチはどのくらいいきるでしょう? ①2〜3週間 ②約1ヶ月 ③約2ヶ月」。7問目は、「自然のハチの巣はどこにつくられることがおおいでしょう? ①雨風のあたらない木のあな ②日かげの木のえだ ③日なたの花がたくさんある所」。8問目は、「ミツバチの幼虫の住む家はどんな形でしょう? ①円形 ②5角形 ③6角形」。9問目は、「女王バチが2ひき同時に産まれました。いちばんの女王バチをどうやってきめるでしょう? ①じゃんけん ②たたかう ③オスがきにいったほう」。10問目は、「女王バチは1日にたまごを何こ産むでしょう? ①1〜10こ ②1000〜1500こ ③10000〜20000こ」。

     10問のうち7問に正解したのは、2組の親子だった。

    うわーっ、蜂蜜がいっぱい出てきた

     クイズが終わると、いよいよ採蜜体験だ。子どもたちが目を輝かせて見つめる中、新海養蜂場で浩二さんと一緒に働く甥の新海智文(ともふみ)さん(28)が、蜜蓋切りの実演を披露する。

     今日のイベントのために蜜蓋を切らずにおいた蜂蜜が溜まっている巣板だ。参加者に蜂蜜の溜まった巣板を持ってもらうと、「重〜いっ」と驚きの声。参加者が次々と巣板の重さを確かめた後、智文さんが包丁で蜜蓋を切ると蜜房の中からねっとりと今にも溢れ出しそうにキラキラ光る蜂蜜が現れた。すぐ目の前まで詰めかけて見つめていた参加者から「オーッ」と声が上がる。続いて、手回しの遠心分離機に掛けて、参加者が自分でハンドルを回して採蜜する実演だ。蜂蜜の状態が見えるように透明のアクリル板で特別に作られた遠心分離機の底に蜂蜜が溜まっていくのが目の前で見える。「うわーっ、蜂蜜がいっぱい出てきた」「蜂蜜だらけ」などと、子どもたちは大はしゃぎである。代わる代わる参加者が遠心分離機のハンドルを回すのを、子どもたちが息を殺して驚きの眼で見つめている。参加者全員が遠心分離機のハンドルを回し終わると、まだ蜂蜜が残っている蜜ロウを少しずつ食べてもらう。「わーっ甘〜い」と再び子どもたちがはしゃぎ出す。口に残った蜜ロウをべっぺっと吐き出す子もいて大騒ぎだ。

     採蜜体験が終わると、浩二さんがミカン蜜とトチ蜜、それに百花蜜の3種類の蜂蜜を味見として提供し、「花の種類によって色、味、匂いが違うということを知っていただければと思います」と、説明する。参加者が首をひねりながら蜂蜜の違いを確かめようと、何度も蜂蜜を口に運んでいる。

    放し飼いなのに、どうして花は
    特定できるのですか

    最後は、質問コーナーである。

     参加者から「そもそも蜜蜂は蜜を溜めてどうするのですか」と、最初の質問だ。浩二さんが、「越冬できるのは蜂蜜という食料があることと集団で居ることで保温ができるため。蜂蜜は越冬するための食料なんです」と説明する。次の質問は「蜂蜜はどれくらいで溜まるのですか」。「一週間程度で蜜は蜜房に一杯になります」と答えると、参加者から「えーっ」と驚きの声が上がる。次の質問は「蜜ロウはどうやってできるのですか」。浩二さんの答えは「蜜蜂のお腹のところにロウセンがあって、そこからロウを出します」。次の質問は「放し飼いなのに、どうして花は特定できるのですか」。「まとまった蜜源があれば蜜蜂はそこへ行きます」と答える。最後の質問は「働かないのにオス蜂は何でいるのですか」。浩二さんの答えは「種の保全のために必要なんです」。

     5、6歳の子どもたちが、どこまで分かっているのだろうか一寸心配だ。

    日本産の蜂蜜であることが嬉しい

     参加していた母親は、蜂蜜を味見しながら「日本産の蜂蜜であることがすごい嬉しいですね」と、喜んでいた。両親と一緒に参加していた布目匡(ぬのめ ただし)くん(7)は、「(遠心分離機のハンドルを)ゆっくり回しているようでも中は早く回っていたので驚いた」と感想を話してくれた。独りで参加していた菊谷守泰(きくたに もりやす)さん(82)は、「蜂に刺されると怖いからどうしたら刺されないかって興味がありましたのでね。蜂蜜は紅茶やコーヒーに入れて毎日使っていますよ」と、参加した動機を話す。

     約1時間のイベントだったが、採蜜の実演は普段体験することができないだけに参加者には強い印象が残ったようだ。蜜蜂の生態に親しみ、蜂蜜の知識を得たことで、参加者には養蜂家の仕事を身近に感じたことだろう。

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