2014年(平成26年)12月・3号
発行所:株式会社 山田養蜂場 http://www.3838.com/
編集:ⓒリトルヘブン編集室〒880-0804 宮崎県宮崎市宮田町10-22-203
料理家・あさみ智子の蜂蜜と地元素材を使った
「ミラクルスィーツ」①
「ベジタブル
ロールケーキ」
アーモンド豆腐クリームとスライスアーモンドをトッピングしたベジタブルロールケーキ。切り口がパンダの顔に見える
「ほとんどが『和』の食材になります。だからこそケーキらしい繊細さを目指したいところですよね。生地には、地元で採れたニンジンが摺り下ろして入ってますし、クリームは、3軒先の徳丸とうふ店の木綿豆腐が主材料。豆腐と蜂蜜かと思われるでしょうけれど、これが又、ベストマッチで美味しいのです」
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料理家のあさみさんが、ベジタブルロールケーキのポイントを説明しながら、地元産の地薄力粉120グラムを篩(ふるい)に掛け、その上に重曹小さじ1杯をふるった。砂糖は、ミネラルを残して精糖した素焚糖(すだきとう)を80グラム使う。これを軽く混ぜ合わせておいたものを「A」ボールとする。
次に、豆乳100ccと菜種油(なたねあぶら)を50cc、それに岩塩を一つまみとナツメグをパラッと加えて乳化するまで混ぜ合わせる。そこに、摺り下ろしたニンジン100グラムを加え、更に混ぜ合わせて「B」ボールとする。
「岩塩がよろしいです。海塩だったら伸びる、岩塩だったら締まるといった考え方ですね」。たかが塩一つまみと思っていたが、奥が深い。「Bボールの食材を、油と豆乳が乳化されるように混ぜてください。ようするにニンジンジュースのような状態なんですよね。生で食べても良いんです。斜めに空気を入れて乳化させてあげて、これが、バターと卵の代わりをする訳ですね」
液体のBボールをよく混ぜ合わせたら、粉のAボールに流し込んで、サクサクと捏(こ)ねずに混ぜておく。あとは、天板にオーブンシートを敷いて、混ぜ合わせた生地の種を流し込み、180℃に設定したオーブンで10分間焼くだけだ。
「卵を使ってないので、生地が膨らまないことはないんですよ。何でフワッとさせるかって言ったら、乳化させた生地の種と重曹でしょう。だから、あんまりベスト温度というのが必要じゃなくて、例えばオーブントースターでも焼けちゃう感じ。気軽なんです」
生地を焼いている間に、ロールケーキに巻き込むアーモンド豆腐クリームを作っておくことにしよう。
ブレンダー(無ければミキサーかすり鉢でも良い)に木綿豆腐を300〜400グラム入れ、それにアーモンドを適量、粉寒天4〜5グラム(豆腐の量に比例して)と菜種油を大さじ3杯に柑橘の汁を大さじ1杯。ここで、蜂蜜100ccも加える。
「蜂蜜はお好みで構いません。100ccくらいで、程よい甘さになりますね。場合によっては300cc入れたとしても、激甘っていう風にはならないので、蜂蜜本来のお味が出てくると思いますよ。菜種油はビタミンが豊富で蜂蜜との相性も良いんです。それに柑橘の汁、今日は、隣で採れたユズの果汁を使いました。粉寒天の量は、クリームが水っぽくならないために寒天を入れて引き締めておくってことですから、そんなに厳密でなくても大丈夫ですよ」
スポンジの生地が焼けたようだ。10分間焼いた後は、オーブンの蓋を少し空けて熱気を逃がしながら、庫内で蒸らしゆっくり冷ましていく。
「素材がひび割れないで、スポンジがしっとりした生地になるために、ゆっくり冷ますんです。しっかり冷めたら、敷いたラップの上に生地を裏返して置いて、両端に切れ目を入れて蜂蜜を塗ると、生地は一段としっとりしてきますね。そこにアーモンド豆腐クリームをたっぷり塗って、今日は地元綾町で採れた自然農法のブルーベリーを使いますけど、キウイフルーツとかイチゴも良いし、中身は何でも変えていただいて結構なんです。ともかく、すごく美味しいし、きれい、すぐできる。もし、ベジタブルロールケーキ作りで、硬い、苦い、膨らまないっていうのがあったら、それは失敗じゃないんです。素材が素直だから、作り手の心が反映してるんです。心が反映されやすい自然に近い素材をいっぱい使うじゃないですか。だから、気持ちを穏やかに、美味しい物を食べさせてあげたいと気持ちを込めて作らないとね」
あさみさんが、豆腐クリームを塗った上に、大粒のブルーベリーを横3列に丁寧に並べていく。ラップを両端から引き上げるようにして生地を巻き、一本のベジタブルロールケーキが完成した。ラップに包んだまましばらく置いて馴染ませ、輪切りにするとパンダ顔のような断面が現れた。
トッピングとしてアーモンド豆腐クリームでデコレーションし、スライスアーモンドをのせた後、垂らした蜂蜜が輝く。脇に添えられた小さなニンジン葉に、あさみさんの気持ちが込められているようだ。
ザクッと上からフォークを差し込んで、ひと口いただく。口の中で溶けていくように柔らかい。優しい甘さがゆっくりと広がり、祖母が作ってくれた饅頭の粉の香りが鼻の奥に残った。不思議な愛おしさがこみ上げてくる。これが和の素材ということなのだろうか。それとも作り手の心が反映されたからなのだろうか。
■ 主な材料
◎Aボール:スポンジ生地
地薄力粉 120グラム
重曹 小さじ1杯(ふるう)
素焚糖 80グラム
◎Bボール:スポンジ生地
ニンジン 100グラム摺り下ろし
豆乳 100cc
菜種油 50cc
岩塩 一つまみ
ナツメグ 適量
◎アーモンド豆腐クリーム
木綿豆腐 300〜400グラム
アーモンド 適量
(粒でもスライスでも可)
粉寒天 4〜5グラム
菜種油 大さじ3杯
柑橘汁 大さじ1杯
蜂蜜 100cc(好みで)
◎巻き込む素材
フレッシュフルーツ適量
(今回は、ブルーベリー)
① ふるった薄力粉に素焚糖を加える
② 豆乳に菜種油を加える
③ 豆乳と菜種油を乳化させ、ニンジンを加える
④ 粉と液をサックリと混ぜ、オーブンへ
⑤ 豆腐に蜂蜜を加える
⑥焼き上がったスポンジ生地
⑦スポンジ生地に蜂蜜の層を作る
⑧ ブルーベリーを手前に並べる
⑨ラップを引き上げるようにして巻く
料理家・あさみ智子(ともこ)
1969年京都府生まれ。幼い頃から料理好き。自然を求めて育つ。東京でファッションモデル中心の活動をした後、1994年にオーガニックな環境を求めて、宮崎市へ移住。料理を仕事として、オーガニック関連店の立ち上げに係わり、ケータリングや料理教室をしながら精進し、2006年に玄米菜食.comを立ち上げ、カフェ山猫を始める。
2014年に現在地の綾町に移転。一男二女の母。
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