2019年(令和元年7月) 34号

発行所:株式会社 山田養蜂場  http://www.3838.com/

編集:ⓒリトルヘブン編集室 〒880-0804 宮崎県宮崎市宮田町8-7赤レンガ館2F

吉岡良祐シェフの「バラ寿しのカクテル」

撮影・編集:塩川陽一

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     「今回も家庭で役立つ料理を考えたんですけど、電気炊飯器で炊いたご飯で、寿し飯を作ります。寿し桶は使いません。本当は炊く時に水を少し減らした方が良いですけどね。ご飯は2合焚きます。今は、温かいシャリを握るというのが主流になっていますので……」

     なるほど、寿し桶のない家庭も最近は多いので、主婦にはありがたい提案だ。

     「まず、シャリの酢を合わせていきます。酢40cc、砂糖30g、塩10gですね。寿し飯に合わせる塩は、できれば並塩が良いですね。それに蜂蜜を7g混ぜていきます。蜂蜜を入れるのは、酢をまろやかにするためですね。ほんと弱火で、砂糖が溶けたら、もう、それで良いです」

     良祐シェフは、こう言いながら合わせ酢を入れた片手鍋を弱火の上で揺らし、円を描くように回しながら、炎から遠くしたり近づけたりして鍋から目を離さない。「はい、砂糖と蜂蜜が溶け合ったら、これで良いです」と、火を止める。厨房には酢の匂いが漂い、これだけで頭の中は寿しモードに変換だ。ここまででひと区切り。5分も掛かっただろうか。

     ここで良祐シェフ、ご飯2合が炊き上がった炊飯器の中釜だけを調理台の上に載せた。「ご飯は温かいままで良いです。ここに先ほどの合わせ酢を少しずつ全体に掛け回すように入れていきます。入れ終わったら、ご飯を少し鍋に入れて残っている合わせ酢を絡め取るようにサッと混ぜて中釜に戻しますね。ダマになっている所を縦に切るようにですね。優しく切っていきます。この時、あまり練ったくらないことです。合わせ酢がご飯によく混ざったら、キッチンペーバーを濡らして、よく絞ってからご飯の上に被せて、30分ぐらい常温のまま放置しておきます。これで寿し飯は完成です」

     次は、寿し飯の上に載せる具材を作る。「アボカドを切っていきます。種の周りに包丁を入れて、クルッと回せばポロッと半分になり、種に包丁の角を突き刺してクルッと捻れば種は取れますね。縦に4つに切って皮を剥いてから食べやすいように1㎝角に切ってボールに入れておきます」

     「続いて合わせ調味料を作りますね。ショウガ10g、白ゴマ10g、薄口醤油20cc、みりん15cc、ゴマ油が10cc入ります。あとはネギですね。10g程度入ります。これをボールの中でしっかり混ぜたら大丈夫です。では、先ほどのアボカドとサーモンに下味を付けますね。下味なので、量は気にしないでざっくりと混ぜます。合わせ調味料が馴染めばO.K.です」

     次は、錦糸卵を作る。「卵2個をボールに割り入れ、白身を切るように泡立て器を横に動かすように溶いていきます。塩を一つまみ。卵を締めるための塩ですから、塩辛くならないようにしてくださいね」

     ここで良祐シェフは、卵焼き用の小さめの四角いフライパンをガス台の上に載せ火を点けてから、油をたっぷり染み込ませたキッチンペーパーでフライパン全体に油を馴染ませる。フライパンが熱せられた頃を見計らって、ボールに溶いた卵をサッと流し入れ、すぐに卵をボールに戻すと、フライパンの底に薄い卵焼きがへばり付いている状態になる。ここからフライパンの縁に付いている卵を菜箸で剥がし、手鏡を見るようにフライパンを縦にゆっくり持ち上げる。この時、菜箸をフライパンの上から3分の1辺りで横に渡しておくと、上から卵が剥がれてくるので、それを菜箸で受け止め、フライパンに戻して反対側を少し焼く。流れるような良祐シェフの手元に見とれているうちに、薄焼き卵が5、6枚、次々と焼けていった。まるで手品を見ているようだ。「いょっ!料理人」と拍手を送りたくなるような手際の良さである。

     まな板の上に重ねられた薄焼き卵を端から細く切ると、フワッとした食感のある錦糸卵の出来上がりだ。

     「今日のバラ寿しのカクテルは、ホームパーティのワンポイントとして、可愛くチラシ寿しが出来ますよって感じですね。シャリをワイングラスに飾り付けます。もちろんカクテルグラスでも良いし、お皿でも良いんです。シャリに錦糸卵を載せ、その上にアボカド、サーモンを載せ、キュウリとプチトマトで飾り付ければ、片手でお喋りを楽しみながらでも食べられるバラ寿しの完成です」

     緑色のアボカドと明るいオレンジ色のサーモン、それに錦糸卵の黄色。なんとも華やかなグラスを手にすると、口に運ぶ前からゴマ油の香りが食欲を促す。「アボカドとゴマ油は合いますよね。魚は何でも、マグロでも良いですね」と、良祐シェフ。

     夏の夕暮れ時、芝生の上で親しい友人たちと過ごす休日のホームパーティ。ワインで火照った頬に木立ちを抜けてきた涼風が心地良い。朱塗りの小さなスプーンで心づくしのバラ寿しを一口いただく。過ぎ去る時が愛おしく感じられる。「よし明日も頑張ろう」と思わせてくれるバラ寿しのカクテルだ。

    吉岡良祐(よしおか りょうすけ)

    大阪、福岡の「なだ万」にて修業し5年前に宮崎にて独立。「Japanese Restaurantりょう」をオープン。カジュアル割烹という親しみやすい中にも、こだわり抜いた料理を提供。県外から通う常連ができるほどの店となった。素材の知識や調理法には常に進化を求め、今なお新しいアイデアでお客の「美味しい」を引き出している。現在、宮崎市内で3店舗を経営。

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