2020年(令和2年3月) 39号
発行所:株式会社 山田養蜂場 http://www.3838.com/ 編集:ⓒリトルヘブン編集室
〒880-0804 宮崎県宮崎市宮田町8-7赤レンガ館2F
あさみ智子さんの「イチゴサラダパスタ」
撮影:塩川陽一
撮影・編集:塩川陽一
小雨の降る土曜日、新型コロナウイルスの影響もあって休業している「カフェ山猫」の店内は静かだ。料理家・あさみ智子さんは材料を整え、厨房に黄色いチューリップを飾って我々を迎えてくれた。
「今日はイチゴと蜂蜜が主材料。それをサラダ感覚でいただく料理なんです」とあさみさんが、この日の料理イメージを伝える。
調理を始める前に、盛り付けに使うリーフサラダを準備しておかなければならない。レタスやラディッシュ、水菜、ルッコラなどを混ぜてボールに入れたリーフサラダを冷蔵庫に入れておくのだ。
「最初はパンを一口で食べられるくらいの大きさに切ってください。手で千切ってもOKなんですけど、天然酵母パンが良いですね。時間が経っても風味が増して美味しくなりますので……」
弱火のガス台に厚手の鉄板を載せ、ひと口大に切った天然酵母パンを焼く。焼くというより炙るといった表現が適切なほど短い時間だったのに、たちまちパンの香ばしい香りが厨房に満ちてきた。鉄板からパンを取り出すと、次に、イチゴを乱切りにしていく。
「イチゴは蜜蜂のお蔭で結実しているんですよね。蜜蜂は害虫も駆除してくれるんですってね。イチゴは香りの良い果物の一つなんで、香りを楽しんで食べたいですよね。この後は、時間との勝負になりますので、ここで干し椎茸の下ごしらえをしておきます。天日に2、3日干すだけで、椎茸の香りがぐんと良くなりますね。干し椎茸を戻すと、戻し汁に椎茸の旨みが行っちゃうので、戻さないままでハサミで細切りにします。天日干しのトウガラシは丸ごと使います。ヘタを取っちゃうと辛くなってしまいますからね。今日はイチゴの味を楽しみたいので、姿のまま使います」
あさみさんの頭の中には、盛り付けまでのプロセスが描かれているのだろう、よどみなく下ごしらえが進んでいく。
「次に、蜂蜜200gとエキストラバージンオリーブオイル100gを軽く混ぜ合わせます。搾りたてのオリーブオイルは苦いんですけど、それを蜂蜜と混ぜます。今日はちょっと寒いので湯煎しますね」
蜂蜜とオリーブオイルを混ぜ合わせ赤みのある黄土色になったソースに、あさみさんが感嘆の声を上げる。「ああ、美しい色ですね」。
さて、いよいよ、タリアテッレ(パスタの一種)を茹でる。
「茹でる時は海塩を使います。たっぷりのお湯にたっぷりの海塩を使います。タリアテッレ、平麺ですね。アルデンテなので8分と指示されてますが、2〜3分短めで上げてください。硬いめが美味しいですね。麺を鍋に入れたて茹ではじめたら、すぐ、別のガス口でフライパンを火に掛けます。続いて冷たく保管されていたニンニクを包丁で叩いて起こします。ニンニクの量は好き好きで良いですね。ここからが時間との勝負です。フライパンが温まったところでたっぷりのオリーブオイルを入れ、潰したニンニクと丸ごとのトウガラシを入れます。弱火で良いです。香りが立ってきたら細切りにした干し椎茸を入れ、茹でておいたヒヨコ豆を入れます」
ジャジャジャーとフライパンが音を立て始める。食欲をそそる香りが厨房に充満する。それと同時にタリアテッレが茹で上がった。
「フライパンの火を強火にしていただいて、タリアテッレをフライパンに移します。ゆで汁をカップ一杯加えます。赤いバルサミコ酢を小さじ一杯入れます。ここは素早くやりますね。香りの白コショウを加え、オレガノ、バジルを加えて和えます。赤いバルサミコ酢が椎茸やバジルなどの臭さを和らげて良い香りにしてくれますよね。ここで、味を見て塩味が足らなければ岩塩を少々加えてください」
最後に、蜂蜜とオリーブオイルとを混ぜたソースをボールに入れた乱切りのイチゴに掛け、温めた一口大の天然酵母パンを加え、ヘンプシード(麻の実)を加えて混ぜ合わせる。木製大皿にタリアテッレを盛り付けてリーフサラダを上に添える。その上にイチゴとパンのサラダを盛り付けて完成だ。イチゴの赤、リーフサラダの緑、パスタの黄色。彩りの良いボリューム満点の「イチゴサラダパスタ」だ。
タリアテッレを下から引っ張り出すようにフォークに巻いて、一口いただく。絶妙なアルデンテだ。イチゴに絡みついている蜂蜜とオリーブオイルのソースの甘みがほんのりと口に残る。美味しい、幸せの味だ。イチゴを一つだけ口に運ぶ。パンを一つだけ口に運ぶ。干し椎茸、パン、噛みごたえがあるが、噛むほどに旨みを感じる。複雑な食感、深みのある甘み。材料一つ一つを味わううちに大盛りの一皿を完食していた。
料理家・あさみ智子(ともこ)
1969年京都府生まれ。幼い頃から料理好き。自然を求めて育つ。東京でファッションモデル中心の活動をした後、1994年にオーガニックな環境を求めて、宮崎市へ移住。料理を仕事として、オーガニック関連店の立ち上げに係わり、ケータリングや料理教室をしながら精進し、2006年に玄米菜食.comを立ち上げ、カフェ山猫を始める。
2014年に現在地の綾町に移転。
一男二女の母。
Supported by 山田養蜂場
Photography& Copyright:Akutagawa Jin
Design:Hagiwara Hironori
Proofreading:Hashiguchi Junichi
WebDesign:Pawanavi