2015年(平成27年2月)4号
発行所:株式会社 山田養蜂場 http://www.3838.com/
編集:ⓒリトルヘブン編集室〒880-0804 宮崎県宮崎市宮田町10-22-203
料理家・藤原奈緒の蜂蜜を使った
「あたらしい日常料理」③
「蜂蜜と
マスタードのソース」
アーモンド豆腐クリームとスライスアーモンドをトッピングしたベジタブルロールケーキ。切り口がパンダの顔に見える
良く晴れた春の日曜日。遅くなった朝食に、冷蔵庫から引っ張り出した野菜を軽く茹で、作り置きの蜂蜜とマスタードのソースを掛けた温野菜のひと皿があると、静かで豊かな休日を過ごせそうな予感がする。作り方はとても簡単だが、そんな気分にさせてくれるソースをご紹介しよう。
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大皿に盛り付けられた温野菜は、菜の花、カブ、亀戸大根やウドと一緒に、砂糖大根の仲間のゴールデンビーツとケールと芽キャベツを交配して作った新野菜のプチベールという珍しい野菜も添えられていた。このソースはまろやかで、野菜一つ一つの味を活かそうとするため、カブやゴールデンビーツのほのかな甘味まで感じられる。しかし、何と言っても今回使った野菜の中では、菜の花の苦みとマスタードの相性が良かった。春をいただくという新鮮な気分が、菜の花の爽やかな苦みによって一層鮮明になるのだ。
大さじ1杯のフレンチマスタードが入った小さなボールに、オリーブオイルを大さじ2杯加えて、丁寧に混ぜ合わせる。
「ここが最初のポイントです。ちゃんと乳化させてくださいね。そうするとフワッとしたソースができあがりますので。フワッと乳化しましたら、蜂蜜を入れます。今回は、温野菜に菜の花を使いますので、百花蜜なんですけど、菜の花の蜂蜜が入っているものを用意してみました。蜂蜜は、マスタードの半分、大さじ半分ですね。ここで又、混ぜます」
蜂蜜が混ぜ合わさったら、次に、米酢を大さじ1杯加える。全部を一度に混ぜ合わせるのではなく、一つ一つを順番通りに、完全に混ぜ合わせてから次を混ぜ合わせることが大切なのだ。
「お酢とマスタードの味によってソースの味が違ってきますので、お好みでお塩を加えて自分好みの味わいにしてくださいね。このままでも良いんですけど、コショウを粗めに挽くとアクセントになって味に変化が出ます。さあ、これでできました。お酢とマスタードが入っているので日持ちしますよ。一週間は余裕で大丈夫。常温に置いておくと味が変わってきちゃうんで、保存は、冷やしてくださいね」
ソースは出来たけれど、それを掛ける野菜を茹でなければならない。
「野菜は、基本的には生でも食べられるものが多いので、ゴアゴアしている箇所だけちょっと取り除きます。野菜は、繊維に沿わせて切るのか、繊維を絶つのかで食感が変わりますよね。食感が変わると味も違うので、まず切って食べてみて判断すると良いですよ」
ニンジンは大きく乱切りにして、竹串が通るくらい茹でる。亀戸大根とカブのゆで加減は、表面に透明感が出るくらいだ。
「カブは、実と皮の間に美味しいところがあって皮を剥かないので、ゴリゴリッと硬いところだけ取ってください。緑の野菜は、ふっとうしたお湯で茹でて、色が一番鮮やかになった瞬間に引き上げると間違いないですね。そして、水は、上から掛けない。皆さん、色止めとか言って水を掛けるんですけど、茹でるということは水分を抜くことなので、水分が抜けた後に水を掛けてしまうと、全部吸い込んじゃうんですね。それで水っぽくなっちゃいますので。菜の花は、茎の根に近い方が少し太いので、先に根に近い方からお湯に浸けておいて、ちょっと泳ぐくらい。やっぱり色が目安なので、表面が艶々としてきましたら引き上げます」
蜂蜜とマスタードのソースは、材料をただ順番通りに混ぜ合わせるだけ。温野菜は、素材の野菜をただ茹でるだけ。あまりにも簡単で拍子抜けするようだが、良く聞けば、美味しい料理には、細心の気配りと観察力が欠かせないと伝わってくる。
「このソースは使いやすいので、サラダとか温野菜とか前菜にも、とにかく色んなものに掛けて、マヨネーズ代わりに使ってみてください。蜂蜜を入れると、ドレッシングよりソースとかディップみたいなとろみが出ます。とろみが出ることで白身の魚とか鶏の胸肉にも合いますので、ソテーとかフライに掛けていただくのも良いと思いますよ。日持ちがしてストックしておけるソースがあると、毎日の料理が楽になるでしょう。野菜をいっぱい食べられるソースと言ってもいいですよね」
「俺が俺が」と自己主張する市販のドレッシングやソースが多いなか、ゆっくりと食事を楽しむには、素材の味を活かすソースは欠かせない。
■ 主な材料
フレンチマスタード 大さじ1杯
オリーブオイル 大さじ2杯
蜂蜜 大さじ半分
米酢 大さじ1杯
塩 好みで少々
コショウ 好みで少々
季節の野菜を温野菜に
① 温野菜の材料を揃える
② マスタードにオリーブオイルを加える
③ 乳化したマスタードに蜂蜜を加える
④ コショウを粗く挽いてソースが完成
⑤ 緑色が鮮やかになった瞬間に引き上げる
⑥ 彩りを考えて盛り付ける
藤原 奈緒(ふじわら なお)
料理家。札幌市生まれ。2004年より東京都小金井市のカフェで、地場野菜を使った料理とケータリングを担当。2006年に素材の扱い方を伝える「日常料理教室」を開講。2014年11月に東京都東小金井駅近くに「あたらしい日常料理 ふじわら」をオーナーシェフとしてオープン。
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