2020年(令和2年5月) 42号

発行所:株式会社 山田養蜂場  http://www.3838.com/

編集:ⓒリトルヘブン編集室 〒880-0804 宮崎県宮崎市宮田町8-7赤レンガ館2F

料理研究家 杉松泰子さんの「スパゲティハニーサラダ」

撮影:塩川陽一

撮影・編集:塩川陽一

  • 続きを読む

     小ぬか雨の降る午後、料理研究家・杉松泰子さんの自宅から望む母なる大淀川は、軟らかいベールに包まれ静かに流れていた。居間にある大きなテーブルに、整然と並んだキュウリの入った箱が一つ置いてある。

     「佐土原の農家さんが昨日の朝ちぎったのを、午後取りに行ったのですよ。大阪に居る娘は宮崎育ちだから『大阪の野菜は食べられない』って言うんです。このキュウリはトゲが付いてて新鮮なので、送ってやれば娘が喜ぶと思いますよ。今日の料理で使う新玉ネギはもうそろそろ終わりですけど、宮崎は全国で一番早く出来るんですよね」

     宮崎の野菜愛が言葉の端々に滲み出る杉松さんだ。

     動画撮影の段取りを打合せして調理が始まる。「キュウリをスライサーで垂直にスライスしていきます。包丁で切ってもいいんですけど、この方が均一にスライスできますね」。撮影は順調に始まったと思えたが、塩川カメラマンからストップが掛かる。どうやらスライスしている杉松さんの右手が影になって、肝心のキュウリが見えないようだ。塩川カメラマンから左手でスライスするように注文だ。無理なお願いを快く引き受けた杉松さん、スライスしたキュウリの切り口を見て、「なんかすごく可愛い花模様になっている」と、宮崎産キュウリに更に愛情を注ぐ。「次には新玉ネギをスライスします」。これも左手でスライスだ。「次はレッドオニオンですね」と、左手ではやりにくそうだが、杉松さんは淡々と注文に応じている。新「玉ネギ」、レッド「オニオン」と使い分けている杉松さんに「何故」と聞いてみたかったが、調理は先へ進んで機会を失った。

     「次に、カニカマをほぐします。繊維に沿ってほぐしますが、量は好みで良いんです。沢山入っていた方が美味しいんで、今日は80gですね。赤みが欲しいのと値段的にも買いやすいので……、ハムでも良いんですよ。では、先ほどスライスしたキュウリと新玉ネギとレッドオニオンに塩をします。塩を一つまみして混ぜ合わせ、しばらく置いておきます」

     杉松さん、塩を一つまみ振り掛け、スライスした野菜をボールで混ぜ合わせている途中で、ふっと手を止め、塩をもう一つまみ振り掛けた。何かが、気持ちに引っ掛かったのだろうか。こんな直感こそが料理のコツなのかも知れない。

     次にはIHへ移動し、鍋でパスタを茹でる。「厨房がきれいで、まるで『今日の料理』(NHK)みたいですよ」と、塩川カメラマンが驚いている。

     「パスタは細い方が美味しいですね。ソーメンぐらいの細さなんですけど、ソーメンとはやっぱり違いますよね。カッペリーニというイタリアのパスタです。お湯が沸騰してきましたので、お塩を入れます。そうしましたらカッペリーニを150g入れてタイマーをセットします。ほぐしながら2分ぐらい茹でますけど、製品によって茹で時間は違いますので、袋の表記を参考にしてくださいね。このパスタは細いので茹で時間は短くて済みますね。あと1分ぐらいです。茹で上がったらちょっとだけお水で冷まします。ザルの下にザルを置いて、お湯が捌(は)けやすくします。あまり洗わない方が良いので、こんな程度で……。カッペリーニがくっ付かないように、お好みの……、市販のもので構いませんのでドレッシングを掛けて絡ませます。ここは早めにやってください」

     パスタを茹で始めてから、ここまでは時間との勝負だ。

     「塩をした野菜を良く絞ってパスタに入れます。続いて、ほぐしたカニカマを入れます。良く混ぜます。今日、カニカマは80gですが、好みの量を入れてください」

     杉松さんは、ここでもカニカマの量にこだわっている。多過ぎると思っているのかも知れない。

     「塩、コショウをします。最後の味付けで、レモン汁、マヨネーズ、蜂蜜ですね。蜂蜜を入れると、ほんのり甘くて美味しくなりますよね。全体を良く混ぜ合わせて馴染んだら盛り付けて、最後に黒コショウを振って完成です。この蜂蜜を入れた甘みが美味しくて、いくらでも食べられちゃうんですよ。食べ過ぎてしまって、ちょっと危険ですよね。料理によってパスタの太さは違うのですが、細いと言えばソーメンでも良いんですけど、今日は太いパスタでもなく、ソーメンでもなく、細いパスタです。でもでも、何と言っても、今日の一推しは新鮮キュウリです。新しいのが命ですから」

     杉松さんの宮崎野菜愛は留まるところを知らないようだ。

     ガラスの器に小分けした「スパゲティハニーサラダ」を箸で戴く。歯応えがパスタの存在感を主張する。甘みが効いていて、ハニーサラダと名付ける理由が分かる。1口、2口目、甘みが前面に出過ぎかなと思ったが、食べ進むと、黒コショウのピリピリ感が後味となり、つい箸が進む。このハニーサラダは、食卓の一品としてはもちろんだが、小腹押さえとして戴くのも良いかなと思える初夏の昼下がりのことであった。

    杉松 泰子(すぎまつ やすこ)

    夫の転勤で国内外に在住した際、様々な国の料理や国内の郷土料理など食文化に触れた経験が、現在、料理研究家として活動するアイデアの基になっている。毎日作る自宅の料理をSNSに投稿したことから料理研究家の道に。 2013年に調理師免許を取得し「食卓に彩りと笑顔を」をテーマに、簡単でヘルシーなメニューを日々研究・考案。 メディア出演、料理教室、講演活動、食育活動など多方面で活躍している。 現在、宮崎県食育団体IKUMI(育味)代表、宮崎県立農業大学校評価委員、宮崎県水産試験場評価委員を務める。「おーつかぷらざ」料理教室講師を務め、自宅での料理教室を主催。一男一女の母。

  • 閉じる

▶この記事に関するご意見ご感想をお聞かせ下さい

Supported by 山田養蜂場

 

Photography& Copyright:Akutagawa Jin

Design:Hagiwara Hironori

Proofreading:Hashiguchi Junichi

WebDesign:Pawanavi