2020年(令和2年6月) 43号

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料理家 あさみ智子さんの「新茶マフィン」

撮影:塩川陽一

撮影・編集:塩川陽一

料理家・あさみ智子(ともこ)

1969年京都府生まれ。幼い頃から料理好き。自然を求めて育つ。東京でファッションモデル中心の活動をした後、1994年にオーガニックな環境を求めて、宮崎市へ移住。料理を仕事として、オーガニック関連店の立ち上げに係わり、ケータリングや料理教室をしながら精進し、2006年に玄米菜食.comを立ち上げ、カフェ山猫を始める。

2014年に現在地の綾町に移転。一男二女の母。

 台湾でもベジタリアン料理の講師をしているあさみ智子さんは、今回のコロナ禍で移動がままならない上に宮崎の店は休業、料理教室も中止となり、「普段は意識していませんでしたけど、時間に追われて生活していたんだと実感しましたね」と、久し振りに時間から解放され清々しい表情だ。

 「新茶の季節ですから、今日は、砂糖ゼロ、乳製品ゼロで、ヘルシーな新茶の入っているマフィンにしました。ポイントは蜂蜜漬けにしたレモン1個分のスライスを載せていることと、主材料におからを使っていることですかね。砂糖を入れていないのでお食事にもなるし、小腹押さえにもなると思いますよ」

 あさみさんは、こんな前置きをして調理を始めた。

 「あらかじめ篩(ふる)っておいた地粉(中力粉)140gを大きめのボールに入れます。篩っておいた方がフワッと仕上がりますね。ここに、ふすまを4g、アルミニウムフリーのベーキングパウダーを8g加えます。ベーキングパウダーの代わりに重曹でも良いですよ。これらの材料は全て篩に掛けてボールに入れますね。そして岩塩2gです。岩塩もダマダマにならないように丁寧に篩に掛けます。少し多いかも知れませんが、苦汁(にがり)分が少ないので大丈夫。後で混ぜ合わせる菜種油と岩塩でバター風味を出します。あればですが、最後にナツメグを少々ですね」

 あさみさんは、ここまでの材料を大きめのボールに篩いながら次々と入れ、「大きめの泡立て器が良いですね」と、ざっくり混ぜ合わせた。

 次に、小さめのボールを調理台に置いた。

 「ここに摺り下ろしたショウガを13g、りんごペースト(摺り下ろしたりんご)を35g入れます。そこに新茶を10g加えます。新茶は手で揉んで砕いておきますね。新茶なの、と思うかも知れませんけど、今が時期なので香りが良いしポリポリした食感も良いですしね。新茶の代わりに紅茶でも美味しいですよ。ここからが今日のポイントです。レモンスライスのシロップを加えます。大さじ2杯分くらいになるのかな」

 ここで、あさみさんが半日前から下ごしらえとして、50gの蜂蜜に漬け込んでおいたレモン1個分のスライスから、ガラス器に染み出した果汁シロップを加え、その後、甘みを補うための蜂蜜50gを追加する。

 「蜂蜜とお茶を合わせてギョエッという感じなんですけど、それは食べてからのお楽しみです。これにおからを180gですね。豆乳を搾った後なので、繊維質とかプロテインタンパク質が残っていますので、お近くの豆腐屋さんを探して聞いてみると良いですよね。最後に菜種油150gを加えて混ぜていきます。おからがどっしりと重いので、しっかり混ぜ合わせますね。何なのこれはという物体になってきましたね。全体が混ぜ合わさるとOKです。それでは先ほどの大きいボールの粉に小さなボールの材料を加えて混ぜます。グルテン分が出ないようにザックリと切るように手早く混ぜますね。ダマが無ければOKです」

 後は、調理台の上に紙製のカップを並べ、混ぜ合わせた材料を入れオーブンで焼く準備だ。

 「ディッシャーは便利なので、お持ちになっていると良いですね。1カップに材料を130gほどですね。卵は入っていない。バターやマーガリンも入っていないので、どなたにも召し上がっていただけます。新茶の季節でない時は、何かしら季節の物を加えると良いと思います」

 こう言いながらあさみさんは、ディッシャーで5個の紙カップに材料を入れ終えると、蜂蜜漬けにしてあったレモンスライスの種を取り除き、1枚ずつ紙カップの材料に載せていく。最後に、飾りとしてアーモンドスライスを載せ、180℃に予熱したガスオーブンで20分間焼くと完成だ。

 お客の居ない静かな店内で、あさみさんが淹れてくれた熱いコーヒーと一緒に粗熱を取った「新茶マフィン」を戴く。

 最初に気付くのはナツメグの香りだ。続いて蜂蜜の香り、後々まで口に残る香りは新茶のものだ。「新茶マフィン」は「香りのマフィン」と呼ぶに相応しいと思えた。自然な甘さが気持ちを和らげてくれるのも嬉しい。1つ食べると結構な満腹感だ。あさみさんが言うように、朝食か、午後の小腹押さえにも良いようだ。

 「新茶マフィン」を戴きながら、あさみさんが東京でファッションモデルをしていた若い頃の話を伺った。

 「外国に憧れていた頃でした。サーフィンが出来る場所を探して、偶々フェリーで辿り着いた宮崎にドーンと落とされましたね。サーファーだしベジタリアンだし、一年の半分は海外に行ってましたね。フェリーに乗って早朝、宮崎に着いたんです。曇りだったんですけど光の量がすごいんですよ。ここすごい、と。地図見て、潮見表見て、波情報を調べると『ばっちりやん、ここ』って感じですよ。サーフィンのポイントはがら空きで、温泉あるでしょ。それから3年掛かりで宮崎に移住してきたんですよ。東京のガレージ代と同じ家賃で家借りて」

 料理家あさみ智子が目を輝かせ「宮崎に移住して良かった」と、30年経った今も語っている。

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