2020年(令和2年10月) 46号

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吉岡良祐シェフの「若鶏のハニーマスタード照り焼き」

撮影:塩川陽一

撮影・編集:塩川陽一

吉岡良祐(よしおか りょうすけ)

大阪、福岡の「なだ万」にて修業し5年前に宮崎にて独立。「Japanese Restaurantりょう」をオープン。カジュアル割烹という親しみやすい中にも、こだわり抜いた料理を提供。県外から通う常連ができるほどの店となった。素材の知識や調理法には常に進化を求め、今なお新しいアイデアでお客の「美味しい」を引き出している。現在、宮崎市内で3店舗を経営。

 新しい商業施設のプレオープンで賑わっている宮崎駅前にある吉岡良祐シェフのレストランを訪ねると、店舗の前半分が野菜などを扱う食料品店に様変わりしている。「レストランだけだと昼1時間、夜1時間の短時間勝負じゃないですか。コロナ禍の中、それでは先が見えないので信頼おける食材を販売することで、新しい展開を模索しているんですよ」と、攻めの経営を実践していたのだ。

 「今日は蜂蜜をふんだんに使って、蜂蜜で鶏肉を柔らかくしようと思っています。蜂蜜の酵素で身を柔らかくし、皮にも蜂蜜を使って照りを出すといった感じで2段階に蜂蜜を使います」

 調理が始まる前なのに良祐シェフの張り切っている気持ちが伝わってくる。冷蔵庫から鶏もも肉2枚を取り出して、まな板の上に置く。

 「鶏肉は分厚いところと薄いところがありますので、厚みが均一になるように包丁で開いていきます。筋も切りますね。肉を開いたら蜂蜜を塗っていきます。適量でいいです。薄く揉み込むように身に馴染ませるように塗っていきます。身の側だけに塗りますよ。皮の方に塗ると焼く時に焦げますからね。続いて塩を薄く塗りますね。これで肉の臭みが取れますからね」

 ここで20分間、蜂蜜を塗った鶏肉を常温で寝かせる。

 「待っている間に、インゲン豆10本の両端を切って準備しておきます。和風ではゴボウを巻いて八幡巻きにしますけど、ゴボウはアク抜きなど面倒なので今日はインゲン豆を巻きますね」

 「20分経ったら鶏肉に粒マスタードを塗っていきます。真ん中から広げるように塗ります。後で巻きますので両端は塗らなくても結構です。粒マスタードを塗ったらインゲン豆を5本巻き込んでいきます。手前から皮を張るように巻きます。皮を張るようにですね。巻き終わったらアルミホイルの真ん中に置いて形を整えるように巻いて締めます。巻き終わったら両端をキャンディーのように絞りますね。そうすることで均一の大きさになって同じように熱が通りますからね」

 良祐シェフは1つの作業が終わるごとに、布巾でまな板を丁寧に拭いていく。

 ここまで下準備ができたら次は合わせ調味料を作っておく。料理酒100cc、濃口醤油20㏄、赤酒20㏄、たまり醤油5㏄、蜂蜜20㏄を合わせる。

 「赤酒が手に入らなければみりんでも結構ですし、たまり醤油の代わりにさしみ醤油でも大丈夫ですね。ボールで軽く混ぜれば合わせ調味料は完成です」

 コンロに火を点けてフライパンを載せる。

 「アルミホイルで巻いた鶏肉を中火で焼いていきます。少しずつ転がすようにですね。中火の弱火ぐらいで5分ほど焼きます」

 良祐シェフはこう言いながら、トングでアルミホイルに包んだ鶏肉をひっくり返し、転がし、2本のロールを離したりくっつけたりしている。時折、指で押さえ柔らかさを確認し、手の甲を当てて温度を見ている。5分間焼いたところで、良祐シェフはフライパンを強く前後に揺すり、アルミホイルに巻かれた鶏肉ロールをフライパンの上で大きく転がした。そこで火を止め、フライパンに蓋をし、さらに5分間、コンロの上に載せたままで休ませる。

 「余熱でじっくり低温調理ができると思います」と良祐シェフ。

 コンロの上で5分間が経ちアルミホイルを外すと、所々が焦げたハムのような塊が姿を現した。良祐シェフが調理台を布巾で丁寧に拭く。

 「これを再度、焼いていきます。少量の油を引いてフライパン全体に回します。できれば巻目を下にして焼きますね」

 ジィジィジィジィーと食欲をそそる肉の焼ける音が厨房に響く。

 「軽く焼き色が付いたら合わせ調味料を入れていきます」と良祐シェフ、ボールで合わせた調味料を一気にフライパンに注ぎ込む。フライパンの中で調味料が沸騰する。「照りを出すように強火で転がします」と、良祐シェフがトングでフライパンの中の鶏肉ロールを転がす。フライパンの中は合わせ調味料が泡立って大騒動の状態だ。「泡が大きくなってきたら火を止めます。粗熱を取る段階で照りが出てきますので良く絡めます」。良祐シェフは、フライパンから一旦肉を取り出しタレだけを更に煮詰めた後、もう一度フライパンに肉を戻してタレを絡めた。

 「熱いうちは肉がふわっふわで崩れやすいので粗熱を取ってから、1㎝くらいの厚みに切っていきます」。良祐シェフが鶏肉のロールに包丁を入れると、赤い肉の照りと緑色のインゲン豆の対比が鮮やかな切り口が現れた。

 「今回のような料理は前菜とかあしらいで使いますので、温かいうちに食べることはないですね。冷たくなって食べる和食ですね」と良祐シェフが教えてくれる。材料は4人前になっているが、前菜やあしらいで食べることを想定するとボリュームのある量だ。器に盛り付ける前、つまみ食いをするように2切れ戴く。粒マスタードの香りが印象的だ。インゲン豆のパキッとした歯当たり。軟らかい鶏肉の食感。横で良祐シェフが呟く。「粒マスタードがめっちゃいい仕事をしていますよね」。和食とは言え、蜂蜜の使い方や粒マスタードの効果を考えると、遠くヨーロッパの前菜を思わせる万人向きの一品だと思えた。

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