数が増えて返ってくる貸し蜂
順々に熟すイチゴの収穫は1日置きに5月中旬まで続く
レンゲ蜜を搾った翌朝は、イチゴの収穫だ。
「今朝は寒いですね。もう(今年の収穫は)終わりかけやけん、今日は皆で一斉に採りますよ」と、イチゴハウス前に最初に顔を出したのは毛糸の帽子を被った雅彰さんとウインドブレーカーを着込んだ遥輝さんの兄弟だ。
雅彰さんがイチゴ交配のためにハウスの外に設置した巣箱を見ながら話してくれる。
「交配用に(うちから)貸し蜂を出している農家の一軒なんですけど、巣門をハウスに向けて真っ直ぐでなく巣箱を横向きに置いて、蜜蜂が自由に野原にも飛んでいけるようにしてくれている農家があるんです。そこの蜂は数が増えて返ってくるんですよ。『継ぎ箱にしていいか』と聞いたら、『いいよ』というので、今年は貸し蜂の群から採蜜をするかも知れませんよ」
イチゴ栽培のハウスに設置した交配用蜜蜂の巣箱
貸し蜂の数が増えるとは聞いたことがない。交配用に貸し出した蜂は、交配の確率を上げたい農家の心情を反映してイチゴハウスの中にだけ飛ばせるため、巣門を真っ直ぐハウスに向けて置くのが通常だ。極端な場合は、巣箱をハウスに中に設置することさえあるのだ。しかし、イチゴの花だけでは蜜蜂の餌となる花蜜と花粉が不足し、蜂の数は減り瀕死の状態で返ってくるのが一般的だが、雅彰さんが話す農家は、料金を払って借りている蜂がハウスの外に飛んで行っても構わない状態で巣箱を置いているのだ。蜂を理解しているというか、蜂への愛情が深いというのか、蜂にとっても養蜂家にとっても有り難い農家であることには違いない。
ハウスの中で蜜蜂がイチゴの花に向かって飛ぶ
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