その夜は帰って来なさらんと
池の下蜂場近くの土手で伸びたタケノコを切る朝夫さん
昼休みのことだ。さっぱりした服に着替えた朝夫さんが庭に散歩に出て来た。私の姿を見て昔話を聞かせてくれる。
「昨日、蜜を採った場所は、対馬から来た人が樟脳を作っておった畑ですもんね。もう何代も替わってですね。大きな馬がおってですね。樟脳を作るにゃ楠を屑にせないかんでしょうが……。大きな円盤ですよ、発動機をまわしてから……。レンガの釜の中に蒸気を吹き込んどりよったですもんね。樟脳が出来たら博多に納めに行きなさるでしょうが……。その夜は帰って来なさらんと……。お酒が好きでしたもんね。おばちゃんが腹かきよんなさった(怒っておられた)。ひと晩、飲んよんなさったんやろ。3人も4人も手伝いの人がおんなさったですもんね。私ゃ大きな鋸をいただいておっとですが、使いきらんですもん。大きい大きい」
民話の一節を聞かせてもらったように和やかな気持ちになった。
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