2021年(令和3年4月) 52号

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料理の手順

 「和食の世界では煮詰めて固めるのであれば練り、固める素材を入れるのを寄せ、と言います。今日はゼラチンを使った寄せということになりますね」。市川和希料理人が本日の料理のイメージを伝えてくれている。

 「胡瓜と豆乳を使って青草のような新鮮な香りをなるべく出していきたい料理なんです。それに蜂蜜が加わることで、メロンみたいな風味を出したいんですけどね。牛乳ではなく豆乳を使うのは青草のような香りを強調するためなんです」

 和希料理人の話を聞いていると、料理は創作であることがひしひしと伝わってくる。到達点としては「青草のような新鮮な香り」というテーマがあり、そのテーマに沿って材料を考え、過程が決まり、結果が出てくるのだ。料理の奥は深い。

 「今日は板ゼラチン1枚を使います。板ゼラチンはすぐに戻すことが出来ないので、キンキンの氷水に浸けて一昼夜置いて戻しておきます。粉ゼラチンでも構いませんが、その場合は12g準備してください。戻すのはやはり前日から水に浸けて戻します。急ぐ場合は氷水に浸けますけど3、4時間はかかりますね」

 ガス台の上に銅製の鍋を置き、豆乳500ccと生クリーム250ccを入れてから、ガスに火を点ける。続いて蜂蜜70gを加え、後は休みなく混ぜ続けなければならない。

 「蜂蜜は比重が大きいので、混ぜ続けないと鍋の底に焦げ付きますからね。どんな料理もそうなんですけど、基本的に沸騰するまでは強火です。蜂蜜は甘みを感じやすくて、量を少なくできますのでヘルシーですよね。鍋の周りにプツプツと泡が出始めるまでは良く掻き混ぜます。混ぜ続けるのは大事です。乳製品に火を入れている時は、突沸といって突然沸騰して噴きこぼれることがありますから気を付けてくださいね。鍋の周りにプップッと泡が出始めたら、沸騰する前にゼラチンを入れます。90℃くらいでないとゼラチンは入れられないです。沸騰してしまうとゼラチンは固まらないことがありますからね。ゼラチンを入れたら、よく掻き混ぜて溶かしていきます。しっかり戻したゼラチンだと一瞬で溶けます。沸騰しないよう温度だけは気を付けてくださいね」

 ゼラチンを溶かした鍋を大きなボウルに溜めた常温の水に浸けて、掻き混ぜながらゆっくり冷ましていく。

 「ゼラチンを溶かした寄せ物が熱いうちに胡瓜を入れると色が変わってしまいますので人肌くらいまで冷ませば大丈夫です」

鍋の中の寄せ物がある程度冷めたら、胡瓜の準備だ。

 「胡瓜の両端はえぐみがあるので切り落とします。茎が付いている頭の方はえぐみが強いので少し皮を剥くとえぐみが取れますよ」

 和希料理人は、そう言って胡瓜の両端を切り落とし、茎の付いた側の皮をクルリと剥くと、下ろし金に円を描くようにして胡瓜を擦り下ろし始めた。

 「上下に擦るよりは、円を描くように擦り下ろした方が良いですね」

 厨房にフレッシュな青草の香りが漂ってきた。ボウルの水に浸けてあった人肌まで冷ました寄せ物に、擦り下ろした胡瓜2本分を加え掻き混ぜると調理は終わりだ。後は、広口の耐熱ガラス容器に寄せ物を90ccほど入れ、冷蔵庫で3、4時間冷やせば完成である。

 「今日は青草のようなフレッシュな香りを活かすデザートなので、香りを飛ばしてしまうレモン汁は入れないです。食べる時はガラス容器から直接戴いてください。上から蜂蜜を掛けると一層美味しいですよ。蜂蜜を使うことで糖分を減らしていますし、豆乳を使っていることと胡瓜の酵素も残しているので、かなりヘルシーなデザートになっていますよね。胡瓜でなくてもカボチャやバナナ、サツマイモでもペースト状になる物だったら何でも使えますよ」

 和希料理人が前日から準備して固まった瓶詰めの「胡瓜と蜂蜜の豆乳寄せ」を冷蔵庫から出してくれた。先ずは、スプーンで掬い蜂蜜を掛けないでひと口戴く。ほんのりとした甘みと舌の上でザラザラする胡瓜の粒が新鮮だ。口の中でスーッと消えサッパリとした後味。食事を充分に楽しんだ後でも、このデザートならば胃に優しいだろう。初夏の青空の下で戴くには最適の清々しいデザートだと思った。

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