布を折り畳むように蜜が重なる
ファーム貞光の蜂場近くにあるレンゲ畑に花蜜を採りにきた蜜蜂
イチゴ栽培のビニールハウスを左に見ながら、緩やかな上り坂を歩くと3分ほどで池の下蜂場に着いた。左下は田畑になった谷間、右上には住宅が建ち並び、奥はため池だ。
「親父が米だけは作ってましたね。昔から米農家だったらしいです。家の裏にお地蔵さんがあるんですけど、そこに享和2年(1802年)貞光という苗字があるんですよ。昔から苗字があるちゅうのは、庄屋ではなかったかも知れんけど、それなりの家だったと、親父がよう言いよりますよ、お客が来たら。うちの家も建って100年くらいになるとですよ。元はこの地区に3軒しかなかったと言いよったですね」
福岡県直方市上新入でイチゴの栽培と養蜂を両立させ、トルコギキョウと水稲も栽培する合同会社ファーム貞光の代表社員を務める貞光誠一(さだみつ せいいち)さん(59)だ。
ファーム貞光が管理する11か所の蜂場では、今年のレンゲ蜜の採蜜が順調に進み、この日、1巡目最後の採蜜が行われていた。
遠心分離機で搾った蜂蜜を寿美江さんが
漉し器に入れる
「貸し蜂が返ってきているので、全部で今何群かは分からないけど、この蜂場で(採蜜する)継ぎ箱になっているのは23群かな」
長男の雅彰(まさあき)さん(33)が継ぎ箱から蜜蓋の掛かっている蜜巣板を選び、次男の遥輝(はるき)さん(24)が遠心分離機の傍まで運んで蜜蓋を切る。遠心分離機に蜜巣板をセットするのは誠一さんだ。蜜の状態を見ながら回転速度を微妙に調整している。遠心分離機で搾りバケツに溜まった蜜を濾過器に移すのは妻の寿美江(すみえ)さん(59)の役である。バケツに流れ出る蜜が布を折り畳むように重なる様を見ての第一声が「濃いね」。この日は、普段蜂場には姿を見せない誠一さんの父親朝夫(あさお)さん(90)も好奇心旺盛で、蜜蜂が乱舞する様子を見ては「すごい、すごい」と感嘆の声を上げ、遥輝さんが蜜蓋を切る様子を興味深そうにじっと見つめていた。
糖度が高く硬い蜂蜜は布を折り畳むように重なる
普段は蜂場に姿を見せない朝夫さんが蜜蓋を切る様子を興味深く見つめる
遥輝さんが蜜蓋を切ると黄金色の蜂蜜が現れる
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