多様な花が季節ごとに咲いてくれる
南宮山の麓にある日守蜂場で、翔太さんが搾った蜂蜜を漉し器に移す
「うちは単花蜜としては売っていないんですよ。4月に採った桜蜜を主体にした百花蜜。月ごとに花の特徴が出るのでMonthly Honeyということなんです。4月は桜、レンゲ、ナタネ。5月がレンゲ、エゴノキ、フジ。6月はソヨゴ、カキ、モチノキの花ですね。多様な花が季節ごとに続々と咲いてくれるんです。変化に富んだ地形に恵まれているということなんですかね。鈴鹿が南方系の植生で伊吹山が北方系。それに山の標高差が結構あるんですよ。標高差がないと花が一遍に咲いちゃいますからね」
日守蜂場のすぐ近くではエゴノキの花が満開
取材前の挨拶もそこそこに、有限会社春日養蜂場代表の春日住夫さん(61)が、11年前に新築した店舗の棚に並んだ蜂蜜の瓶を見ながら説明する。蜂蜜の瓶に貼られたラベルには「春桜蜜」や「春の里山蜜」「初夏の里山蜜」「夏の深山(みやま)蜜」それに「伊吹百草蜜」とある。「花の名前だけで、花が咲いている地域が内包している風土のイメージを描けますから。蜂蜜が採れた、そこの自然の様子を思い描いてほしいと思っているんです」。蜂蜜のネーミングには住夫さんのこだわりが込められているのだ。
試食用の蜂蜜を数種類小さなスプーンで食べさせていただく。初夏の里山蜜を口に入れた時だ。「ソヨゴ蜜が主体となったこの蜜は少し苦みがあるでしょ。甘みと苦みは舌の感じる部位がすぐ隣なので、苦みを感じることによって、甘みをより強く感じられることがありますね」。言われてみて初めて感じられるほどの苦みだが、蜂蜜の甘みと微妙な苦み、それと香りの繊細さが重なり合って、木々の花咲く風景を立体的に描いてくれる気がした。
遠心分離機にセットする前に翔太さんが蜜蓋を切る
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