2021年(令和3年6月) 53号

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糖度76度は花の蜜を食べている感じ

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 「移動養蜂で単花蜜を採る養蜂家は年に2000缶採るでしょう。定地養蜂のうちで800缶から1000缶。単花蜜として評価の高いアカシアは博打なんですよ。ウォーターホワイトと言われる透明度の高いアカシア蜜は、花蜜の糖度が高く魅力的ですよ。でも花の時期に長雨が続いたり、流蜜が早くなったり遅くなったりして他の花の流蜜と重なったりすれば、単花蜜としての採蜜量は激減しますからね。ミカン蜜の糖度は低いですね。でも、空気の乾燥状態によっても違います。4月なんかは蜜蓋掛けるまで待たないでも湿度が低いから糖度は高いけど、夏になると湿度が高くなるから蜜蓋が掛かっているのに糖度が(採蜜の糖度基準となっている)78度までいっていないということだってありますよね。うちは4月に蜜を搾り始めますけど、その頃は風味があって一番美味しいのは糖度76度くらい。ほんとに花の蜜を食べている感じだけど、(この糖度だと)発酵しちゃうんで保存はできない。蜂蜜として採っちゃだめですよね。78度79度で採るのが風味もあって保存が効くので取り扱いにも良いですね。それ以上の糖度になると、ほとんど乗り(個人の趣味)の世界ですね。夏は湿度が高いので蜜蓋が掛かってないと78度は超えていないので蜜蓋が掛かっているというのは大事ですね。ま、私のこだわりという話ですよ」

 いきなり養蜂家がこだわる専門的な蜂蜜の品質に踏み込んだ話題になったが、これまで糖度が高い蜂蜜が良い蜂蜜だと思い込んでいた私には、住夫さんの話は衝撃だった。確かに冒頭で住夫さんが話していたように、蜜蜂が花蜜を採る花が咲いている土地の風土が伝わることで蜂蜜の個性が表現されることを考えると、糖度だけを追求するのでなく発酵しないギリギリの糖度を維持することは、品質に関わる採蜜の本質的な技術なのかも知れない。つまり、蜂場に近い自然環境での花の咲き具合と花の種類、蜜蜂の勢いと数、採蜜してから次に採蜜するまでの日数、直近の天気などが組み合わさった条件が整うことで品質の良い、その土地の風土を思い描くことができる蜂蜜を採ることができると知った。養蜂家にとっては、そのタイミングを見極めることが採蜜の技術ということになるのだ。

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