2015年(平成27年10月)8号
発行所:株式会社 山田養蜂場 http://www.3838.com/ 編集:ⓒリトルヘブン編集室
〒880-0804 宮崎県宮崎市宮田町10-22-203
イタリア料理シェフ桑原研郎
ゴルゴンゾーラの
クリームソース ペンネ
グラナ・パダーノを摺り下ろして盛り付けた「ゴルゴンゾーラのクリームソース ペンネ」
ワインが欲しくなる イタリア青カビチーズの塩気
|「私には馴染みのない食材だが、ゴルゴンゾーラはイタリアを代表する青カビチーズとして知られ、世界3大チーズの一つなのだ。どんな料理が出てくるのかと期待して、イタリア料理シェフ桑原研郎さんの店に出かけた。
|「ゴルゴンゾーラには2種類あって、人気のドルチェはまろやかだけど、めったに売ってないんです。そこで今回は、手に入りやすいもう一つのピカンテを使います。ピカンテは[刺す]という意味らしいですね。名前の通り塩気の強いチーズなんですが、ハチミツの力を借りて [まろやか]という意味のドルチェに負けないクリームソースを作ろうということなんです」
|桑原シェフはチーズの説明をしながら、たっぷりの水が入った寸胴鍋を火に掛けた。「ソースはすぐできるので、ペンネを茹でる準備ができてから始めますね」と、のんびり構えている。
|店には19℃に設定された小ぶりのワインセラーが置いてあった。
|「昔は、赤ワインは常温でなんて言ってましたよね。今は自然派ワインというのが流行り出したんですけど、ブドウを無農薬で作って、瓶に詰める時も酸化防止剤を入れないワインなんです。そういうワインは常温に置いておくとコルクが破裂しちゃって、中で発酵してますからね。話が逸れてしまいました。今日の本題ですね。ハチミツを使うことで難しいのはやっぱり、甘過ぎちゃう危険性があることです。あっ、お湯が煮立ったのでペンネを茹でますね。11分です。11分というのはちょっと硬いですけど」
|桑原シェフは、寸胴鍋の煮立った湯に一つまみの塩を入れると、タイマーをセットして80グラムのペンネを茹で始めた。
|「さて、この間にソースを作ります。無塩バター10グラムをフライパンに溶かします。続いて、小さめに切ったゴルゴンゾーラピカンテ40グラムを加えて木ベラで押し潰します。火は止めますよ」
|火を止めたガス台の上で、フライパンのゴルゴンゾーラピカンテの固まりが残らないように丁寧に潰していく。
|「ピカンテがクリーム状態になったら、生クリーム40ccを加えます。ちょっと多い気もしますね。加熱はしません。分離が怖いです。全ての素材が分離する要素を孕んでるんで、チーズもバターも生クリームも。分離しちゃうと見た目が悪く食べたくないですよね。大事なのは火加減です。加熱し過ぎない。これにハチミツをスプーン一杯加えます」
|桑原シェフは、火を止めたままでフライパンのクリームソースにハチミツを加え、木ベラで丁寧に混ぜ続けている。「どうかな」と、小皿にとったソースを味見する。
|「ん、美味しい。すごく美味しい。良い感じです」
|桑原シェフは満足そうだ。バターを溶かす間に加熱しただけで、火は止めたままだ。
|「冷たいと美味しくないじゃないですか。パスタが熱を持ってますんで、フライパンに移す時ゆで汁も入るんですよ。ゆで汁とソースが合わさってソースなんです。パスタをフライパンに入れてから加熱するんで、ちょうど良いと思います。パスタのゆで汁とソースを合わせる意味もありますからね。水と油を合わせるには熱が必要ですから」
|話をしているうちに茹で上がったペンネを、フライパンのソースに移してからガス台の火を点け、強火にした。一気にペンネとソースを絡めていく。
|「ちょっとゆるいかな」。桑原シェフが首を軽く横に傾ける。「生クリームが多かったかな」。ペンネを盛り付けてからグラナ・パダーノを摺り下ろし、ブラックペパーを少し掛けた。
|歯応えのあるペンネに絡まってくるゴルゴンゾーラピカンテのクリームソース。塩気は強く感じるが、刺すような辛さではなくなっている。ハチミツ効果なのだろう、まろやかな深みのある塩気だ。皿が半分になった頃、数滴のハチミツをソースに垂らしてみた。
|「全然違うわ」と桑原シェフが驚いている。途端にまろやかさが増している。数滴のハチミツで塩気が遠のいたのだ。しかし、ピカンテの個性が無くなってしまった。甘みも塩気と同じように塩梅が難しい。
|「この塩気は、ワインが欲しくなりません?」と、桑原シェフが聞いてくる。カラッと晴れ渡った心地よい昼下がり、イタリアならば当然、ワインセラーに手が伸びるところだが、ここは宮崎。後ろ髪を引かれる思いで店を後にした。
■ 主な材料
ペンネ
無塩バター
生クリーム
ゴルゴンゾーラピカンテ
ハチミツ
グラナ・パダーノ
塩
ブラックペパー
80グラム
10グラム
40cc
40グラム
スプーン1杯
大さじ2杯
一つまみ
少々
桑原 研郎(くわはら けんろう)
1976年生まれ。2003年に宮崎市で開業した「ボンターブル」のオーナーシェフ。イタリア料理を中心に、欧州料理を書籍や食べ歩きをして独学で学ぶ。「県産野菜のバーニャカウダ(北イタリア料理・暖かいソースの意)」が、宮崎市健康増進課の「伝えたい健やかなおとなメニュー」に選定。地産地消にこだわり、安心で健康な料理を作ることを目指している。
① ゴルゴンゾーラピカンテを40グラム
② 溶かしたバターにチーズを加え
丁寧に潰す
③ 生クリーム40ccを加える
④ 火は止めたまま丹念に混ぜ合わせる
⑤ ハチミツをスプーン1杯加える
⑥ 茹で上がったペンネを入れ、
火を点ける
⑦ ゆで汁も合わせてソースをペンネに
絡める
⑧ 最後の一滴までソースは残さない
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