これは良い蜂なもんだから
寒さと雨が何日も続いた後の内検で巣板を確認する
午後の仕事が始まった。
淡々と同じ仕事が続くが、時折、純一さんが蓋を開けた後で、継ぎ箱の後ろ側を持ち上げている。「これは良い蜂なもんだから、一段に落とさずに(単箱にしないで)餌を足してやろうと思ってね」と純一さん。継ぎ箱の後ろを持ち上げたのは、蜜がどの程度溜まっているかを確かめたのだ。その上で「お母さん、ちょっと重めの(蜜巣板が)ある」「ちょっと待ってね」「軽いのと重いのとが良い、いや、重たいの2枚で良い」。与える餌の量は微妙なのだ。
餌として蜜巣板を足す場合の他に、継ぎ箱の空間に蜜を溜めたムダ巣がある場合は、そのムダ巣も餌として継ぎ箱の空いた所に入れることもある。そんな場合は、蜂が蜜を食べきった時期を見計らってムダ巣を取りだしてやらないと、女王蜂がムダ巣に産卵を始める場合があって、厄介なことになるのだ。
暖かい日は両脚に花粉団子を付けて蜜蜂が戻ってくる
内検を終えて巣箱の蓋を閉める時、巣枠の上全体を覆うようにハトロン紙を被せるのが通常なのに、純一さんはハトロン紙を半分に折って蓋を閉めている。不思議に思って理由を聞いた。
「蜂がそこそこ居て、湿気のある巣箱なもんですから換気を考えてね」と純一さん。儚い命の蜜蜂を世話することの繊細さを知った。一群一群が微妙に異なる蜜蜂の勢いを読み取ることの大切さが伝わってくる。純一さんが内検を終えて巣箱の蓋を閉めると、蓋の上にレンガ色のチョークで4とか丸で囲んだ3の数字を書いている。数字の右肩に「〃」と印をつける場合もある。その数字は何を意味しているのか尋ねた。
「2から5までは蜂の状態ですね。5が一番良いんですけど、それは今の時期はほとんどないんですが、4だとかなり良い状態です。「〃」はプラスの意味で、「3〃」は4に近い3というくらいの意味です」と、かなり細かい観察であることが分かる。純一さんは、それを巣箱の蓋を開けた瞬間に判断しているのだ。
蜜ロウなどが付いた巣枠を掃除してから巣箱に戻す
蜂場を見回すと、北海道から移動してきて紐が掛けられたままの継ぎ箱が7箱あった。巣門は閉じたままである。純一さんに理由を聞くと、蜂場に運んで設置をしようとした時、すでに巣箱から羽音が聞こえなかったので中の蜂群が死んでいると判断したのだそうだ。巣門を開けておくと盗蜂といって、他の蜜蜂群から、その巣箱に残されている蜜を盗りにくる蜂がいるので巣門を閉めてあるのだと言う。
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