2025年(令和7年12月) .  88号

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乳酸菌を噴霧してダニを落とす

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 この日の午前中、勉さんの生い立ちを聞くばかりで、新垣養蜂園の蜂にはこの時初めて出合った。羽音を意識させない程に温和しい蜂群だ。新垣養蜂園の代表は勉さんだが、実質的に取り仕切っているのは3代目となる長男の伝(つとお)さん(42)である。

 「以前は屋上に80群ほど置いて200キロの蜂蜜を採っていたんですが、現在は25群ほど置いていて採れる蜂蜜は100キロ程度になっています。那覇市の都市化が進んでいるのか、蜜源が少なくなって蜂同士が喧嘩してしまいますね」

 伝さんは蜂の世話というより、屋上のコンクリートの上に落ちている蜂の死骸を掃き集めている。その傍で、元岡辰至(もとおか たつし)さん(20)が巣板に乳酸菌を噴霧して、巣箱の底に白い粘着シートを張る作業を続けている。

 「乳酸菌を吹き付けておくと蜂からダニを落としてくれるので、そのダニを底に敷いた粘着シートで捕るためなんです」。元岡さんは広島県の高校で養蜂プロジェクトに参加していて、卒業後は養蜂家を目指して修行中とのことだ。「高校を卒業してすぐ新垣養蜂園に来たので2年です。ここはできることが幅広いですから、修業したい自分にとってはベストなんです。修業期間は4年と伝さんと相談して決めているんですけど、今後どうなりますかね。僕は寒がりなんで、沖縄は暮らし易いですよ」。

 元岡さんのゆっくりした口調が、新垣養蜂園の仕事のペースに合うというのか、沖縄の暮らしの時間に合っているというのか、こちらまで穏やかな気持ちにさせてくれる。

 「女王が居ました。結構、新しい」と、元岡さんがゆっくりした口調で報告してくれている。

 元岡さんの作業を見ると、通常は巣板の上に被せてある麻布を使っていない。巣箱の蓋を開けると、いきなり巣板が現れる。伝さんにその理由を尋ねると、「沖縄では湿気が多いので麻布を巣板の上に載せると衛生面が気になるので……」と教えてくれた。

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