2025年(令和7年12月) .  88号

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ダニを退治するのではなくて共生する

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 午後一番に店舗を訪ねると、伝さんの母朋子(ともこ)さん(76)が、「伝は3階(屋上)に居るみたいですよ」と知らせてくれた。連絡もせずに屋上の蜂場に上がると、蜂場手前の準備室に見知らぬ男性が2人、何やら真剣に話し込んでいて、私を見て驚いている。気まずい雰囲気だ。すると奥の蜂場から伝さんが「こっちこっち」と言う様に手招きして呼んでいる。突然のことで焦ってしまい、見知らぬ男性には挨拶もしないまま蜂場に入って行くと、伝さんが巣箱に設置された昔のカセットレコーダーのような機械を指差す。コードで繋がれ何かのデータを計測しているようだ。

 「巣箱内の温度、湿度、重量を遠隔で受信してデータとして分析しようとしているんです。あと、乳酸菌でダニを退治する方法が与える養蜂への影響についても研究していて、2年後のミツバチサミットでは発表者になりたいと思っているんです。コロナ以後は、ダニを退治するのではなくて共生する方向を模索しているんです。蜂は生物の先輩なので、元々蜂が持っているものを活かした方が良いと思うんですよね。人間が蜂を箱に閉じ込めたためにダニの被害を受けるようになったと考えると、元の自然界に戻してやった方が良い訳ですよね」

 哲学的な話に少々戸惑いながらも、伝さんが目指す方向性は伝わってくる。すると次に伝さんが私に見せたのは、自然巣を針金で固定した巣枠だ。多くはないが蜜蜂は集っている。

 「分封した蜂群が木の枝なんかに自然巣を作っていたのを採ってきて、その群を巣箱に収納して自然巣を活かして蜂を飼っているんです。冬場に蜂数が減って自然巣が空になったら溶かして蜜ロウにして利用しますけどね」

 

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