2026年(令和8年1月) .  89号

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俺んちの土地だから使って

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 古川敏郎さんのアトリエを後にすると、髙橋さんは軽ワゴン車を運転しながら話し始めた。

 「次に行くのは小栗山蜂場で、八米発祥の蜂場なんです。八米の原点と言っても良いですね。蜂場がなくて色々探している時に人伝(ひとづて)に、小栗山集落の家の間を抜けていくと開けている場所があるよと聞いて行ってみたんです。すると偶々お爺ちゃんがいて『ここは俺んちの土地だから使って良いよ』と言ってもらえた蜂場なんです。4年前には蜜源にアカシアの小さな苗を植えたんですけど、根が浅いのですぐに倒れてしまうんですよ。車が奥まで入らないから雪の上を少し歩かないといけないんですけど……」

 小栗山集落を抜けて小径が途切れた所に車を止めてから、髙橋さんが踏み固めてくれた靴跡を踏むように歩いて蜂場に向かった。ここでも防寒カバーを被せた巣箱は半分以上雪に埋もれ、白餅のような雪が上に積もっている。髙橋さんが苗を植えたというアカシア2本は5メートルほどに成長していた。巣箱の外に出ている蜂がいるかも知れないと期待して巣門を見ると、巣門の前の雪が解けて窪んだ箇所に雄蜂の死体が転がっている。

 「雄蜂は用がないので巣箱から追い出されていますね。食料の節約ですかね」と髙橋さんが、雄蜂の死骸を巣門の前から拾い上げる。厳寒の雪の中に巣箱から追い出されては雄峰も生きていく術がない。蜜蜂群の掟とは言え残酷と言えば残酷だ。蜂の活動で巣箱の中の温度が高いのだろう、巣箱の周りだけは雪が解けている。

 雪の蜂場で為すことはない。「納品に付き合ってもらっても良いですか」と、髙橋さん。

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