2026年(令和8年1月) .  89号

発行所:株式会社 山田養蜂場  https://www.3838.com/    編集:ⓒリトルヘブン編集室

〒880-0804 宮崎県宮崎市宮田町8-7赤レンガ館2F

好奇心旺盛な蜂が外に出て

3

 工場団地蜂場に到着したのは、午後1時半を過ぎていた。真っ白な雪原の中に、30個ほどの巣箱が丸餅のような雪を載せて並んでいる。

 「何匹が飛び出していますね」と、髙橋さんが写真を撮るように私を促す。しかし、1匹2匹の蜜蜂が飛んでいる様子を撮るのは非常に困難だ。さて、困ったと思い、足下に視線を落とすと、雪の表面に小さな窪みがあり、その中に蜂の姿があるのを見付けた。風もなく太陽が照れば、巣箱の中は蜂たちが生活するのに充分な温度となったのだろう。ちょっとばかり好奇心旺盛な蜂が外に出てみたくなるのは当然だ。ましてや雪の季節は、何日も巣箱に閉じ込められているため生理的な用足しもままならない。ちょっとした気晴らしも兼ねて糞をするために外へ行ってみようとする蜂もいるだろう。ところが無風で太陽が照っていても、巣箱の外は雪だ。小さな蜂の体を直ちに凍えさせてしまう。変温動物の蜜蜂は、外気温が低い冬期には生存戦略として、蜂が球状に固まること(蜂球)で、お互いの体温を保っているが、一匹だけが群を離れると急激に体温が下がってしまうのだ。また、積もった雪に突っ込んでしまうのは、蜂が巣箱を出た瞬間に外は一面の銀世界のため、太陽光が雪で乱反射して、飛び出した蜂が方向感覚を失い雪に突っ込んでしまうこともあるようだ。

 一旦、凍えて雪の上に落ちてしまえば、雪に体温を奪われ飛び上がることは難しい。奪われた蜂の体温の分だけ雪が解けて、小さな窪みになっていたのだ。

 周辺を見回すと、幾つかの小さな窪みがあって動かない蜜蜂の姿も確認できる。飛びきれずに雪の上に落ちて、しばらく雪の上を歩く蜜蜂も数匹いたが、彼女たちはもう飛ぶことはできないのだろう。

髙橋さんを見ると、蜂の様子が気になるのか、僅かに巣箱の蓋を開けて見ているが、すぐに蓋を閉じる。巣門を下から覗き込んでもいるが、何かが分かることもないだろう。雪に覆われた蜂場では、やはり為す術はないのだ。

1
3
2
4

▶この記事に関するご意見ご感想をお聞かせ下さい

Supported by 山田養蜂場

 

Photography& Copyright:Akutagawa Jin

Design:Hagiwara Hironori

Proofreading:Hashiguchi Junichi

WebDesign:Pawanavi