2026年(令和8年9月) . 91号
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楢崎部長に案内していただいて見ることができたカラスザンショウの花
アベリアの花にマルハナバチは来るそうだ
8月初旬、近年の夏の暑さは極端だ。気温が40℃以上の日は、今年から酷暑日というらしいが、そんな夏の盛りは自然界の小さな命である蜜蜂にとっても生きるに困難な季節である。何が困難かといえば、盛夏は蜜源となる花が少ないのだ。
そこで、坊ノ内養蜂園の巣箱が置いてあった「きみつのさんぽ道」を歩いてみることにした。許可をもらうのに内山緑地建設株式会社君津事業所の楢崎部長を再び訪ねると、「私が案内しますよ」と先に立って歩き始めた。私の胸の奥でチラッと「自由に歩かせて欲しかったな」という気持ちもあったが、案内が有り難いのも事実だ。
1966(昭41)年に開設された圃場を巡る「きみつのさんぽ道」は、花逍遥の道ルートとマグノリアの小径ルートがある。楢崎部長の先に立って行く方向を見ると、所要時間15分とあるマグノリアの小径ルートのようだ。
インセクトホテルを楢崎部長が説明する
歩き始めてすぐ、まだ駐車場の端を歩いている時、頭より高い位置に青紫色の花の塊があるのを見付けた。この花の名前を尋ねると、楢崎部長が「セイヨウニンジンボクですね」と即答だ。「この花に蜜蜂は来ますか」と問う。「ウーン、あまり姿は見ないですね」と、楢崎部長。盛夏の時期、蜜源はカラスザンショウに尽きるのかも知れない。
少し歩いて小径に入る。丁寧に整備されていて気持ちの良い空間だ。カイヅカイブキが成長して両側から枝が伸びて小径を塞ぐようになった行き止まりの広場に、竹や葦の茎など大小様々の円筒形になった植物の切り口を前面にして並べ、その他の区切りに小枝の切り口や松ぼっくりなども整然と並べて置いた木製の棚がある。何年も風雨に晒されたらしい風情のある棚は、インセクト(昆虫)ホテルとかバグ(虫)ホテルと呼ばれる虫のホテルだ。楢崎部長の説明では、昆虫が越冬する際に住処とする場所を提供しているのだそうだが、この時は、昆虫たちが活発に活動している夏だからなのか、インセクトホテルの宿泊客を見付けることはできなかった。
楢崎部長が無意識に葛の蔓を掴んで引っ張る
小径を少し歩くと、アベリアの花が咲いているのを見付けた。「アベリアには蜜蜂は来ていますか」と聞くと、「蜜蜂は見ないけど、マルハナバチは来ますね」と楢崎部長。確かにマグノリアの小径は濃い緑一色といった感じだ。それにしても昨日の内検の時に蜂たちが溜めていたカラスザンショウの花蜜は何処から採って来ているのか。そんなことを思いながら楢崎部長の後ろを歩くと、時折、彼は、木々に絡まっている葛の蔓を無意識のように掴んで、切れるまで引っ張っている。職業意識がそうさせるのだろう。
九州・福岡県で生まれ育った楢崎部長は大学を卒業した後、環境を守る事業体として地元の大企業である内山緑地建設株式会社に就職して「これで故郷福岡で一生を過ごすことができる」と両親共々喜んだであろう。しかし、入社から間もなく千葉県の君津事業所への転勤を命じられ、君津市暮らしが始まった。もちろん奥様は千葉県の方である。千葉の生活も充実はしているが、定年を迎えたら故郷の福岡で過ごしたいと思っているが、「妻が嫌だと言うんだよね」と少々寂しそうである。
淡路花博記念庭園の入口
樹林のトンネルを抜けて空が開けると、そこは淡路花博記念庭園の入口だ。淡路島で開催されたジャパンフローラ2000で室内展示されたモデルガーデンを博覧会後に、この地に復元した庭である。
マグノリアの小径は一周したが、結局、蜜源となるような花を見付けることはできなかった。「カラスザンショウは、何処に咲いているんですかね」と楢崎部長に尋ねる。少し考えた末に「確実に今咲いている所があるんですけど、ちょっと遠いんです。私が車で案内しますよ」と、EVの白い乗用車の助手席を勧めてもらった。音もなくスタートした白い乗用車は一旦正門を出て事業所の苗木畑の外側を走ると、すぐに未舗装の少々荒れた山道になった。時折、車の底を擦るようにドンと音がするが、楢崎部長は構わず走る。7、8分も走っただろうか、山道の真ん中に車を止めた楢崎部長が谷の向こうを指さして「あれがカラスザンショウの花ですよ」と教えてくれた。木の幹は見えないが細長い枝が斜め上に伸びて葉を付けている。乳白色の花が葉の上を覆うように咲いているのが見える。下からでは花は見えない。楢崎部長はそれを分かっていて、上から見えるここまで案内してくれたのだ。撮影を終えて山道をさらに先へ行くと砂利を採っている広場に出た。「ここから先は我が社の土地ではないんです。見える範囲は我が社の土地で森になっていますけど、その先は砂利を採っているため崖になっているんです。ギリギリ環境保全に役立っているってことですかね」と、楢崎部長がちょっと誇らしげだ。
お陰で、8月初旬の盛夏にはカラスザンショウ以外に蜜源となる花はないことが確認できた。房総半島の蜜蜂にとっては苦難の季節である。
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