兄弟で話し合って、兄が継ぐと
日守蜂場で採蜜作業を終え、ホッとした表情を見せる翔太さん(左)と慎平さん
翌朝は7時に自宅を出発して、南宮山の麓にある日守(ひもり)蜂場で採蜜だ。出発準備をする長男の翔太さん(27)が欠伸(あくび)を噛み殺し少々眠そうにしている。「採蜜が朝7時スタートなんて、日本一ゆるい養蜂家」と住夫さん。自宅横の大きな倉庫には予備の巣箱が数え切れないほど積み上げてある。「蜂をまだ割っていかなきゃならないから」と、同時進行で進めなければならない作業を常に思い描いているのが伝わってくる。二男の慎平さん(25)も採蜜に参加だ。「兄弟で話し合って、兄が父の仕事を継ぐことを決めていました」と、慎平さんは転職するための職場の面接を翌日に控えていて、あくまでも応援なのだが、「父の仕事を知る良い機会かな」と前向きである。
採蜜作業を終え、住夫さんが息子たちとは離れてスマホの天気情報を見る
杉林の中の蜂場に到着する直前の道路脇にエゴの花が満開だった。翔太さんと慎平さんが遠心分離機をトラックから降ろして設置し、合板を敷いたレールを組み立てる。蜜巣板を運んで蜜蓋を切り、遠心分離機にセットして蜜を搾る。搾り終えた巣板の雄蜂を切り、元の巣箱に戻すまでがスムーズな流れになるように動線が出来ている。
蜜巣板を継ぎ箱から取り出し電動蜂払い器に掛ける住夫さんを、杉林に差し込む朝日がシルエットに浮かび上がらせる。乱れ飛ぶ蜜蜂が光の中でキラキラと輝く。
採蜜を終えた蜜巣板を継ぎ箱に戻す際、住夫さんはビースペースと言われる巣板と巣板の間隔を細かく調整している。蜜巣板を入れる継ぎ箱は12ミリ、育児板を入れる下の段の巣箱は8ミリのビースペースだ。
この日、1匹だけ執拗に私に向かってくる蜂がいた。茂みに入ってじっとしているといなくなるのだが、そこから出て行くと再び姿を現して刺すぞと攻撃的だ。住夫さんによると、働き蜂の体内に眠っている覚悟ウィルス(カクゴウィルス)という物質があって、それが何らかの原因で起動すると刺しに来ると、大学の先生が発表していたそうだ。
Supported by 山田養蜂場
Photography& Copyright:Akutagawa Jin
Design:Hagiwara Hironori
Proofreading:Hashiguchi Junichi
WebDesign:Pawanavi