ダニの解決法を見付ければ
食べていける
巣箱を内検する時、住夫さんは素手で巣枠を扱う
日守蜂場の採蜜は午前9時前に終わった。「今日は2升採蜜ですね。5群で(一斗缶)1本。これも日に日に上がっていくんで」と、住夫さんは楽観的だ。翔太さんと慎平さんが遠心分離機をトラックの荷台に積み込んだ後、冷やしたお茶を飲みながらホッとした表情を見せている、兄弟の仲の良さが伝ってくる。
多くの養蜂家が蜂蜜以外の収入として交配用の貸し蜂や売り蜂をしているが、住夫さんは「蜂、死んじゃうんだもん。だから、やらない」と言う。続けて、「蜂蜜売るのは難しいですからね」と若干の自負を匂わせる口調で付け加えた。自然の変化に大きく左右される蜂蜜から得る収入を補うには、安定した収入源となる貸し蜂や売り蜂は避けられないのが多くの養蜂家の現状だ。
栗原蜂場での採蜜は住夫さんが蜜巣板を取り出して運ぶまでを担当する
住夫さんはどうやって収入を確保しているのだろうか。
「40歳代は生産に集中できたことが良かったですね。50歳代は通信販売に力を入れてきました。今は採った蜂蜜の全量を通販で売っています。卸しで売れば3分の1、通販で自分が売れば3倍の収入になりますからね」
住夫さんが養蜂家として抱えている課題は何なのだろうか。
「初夏の里山蜜」となる栗原蜂場で搾った蜂蜜を漉し器に移す
「ダニだけですよ。ダニがあって(蜂を飼うのが)難しいから素人は全滅させてしまうので、養蜂業者には混乱がなくて良いのですが、ヘギイタダニの解決法を見付ければ養蜂家は食べていけますよ。地球温暖化で冬に気温が下がらないのも問題ですね。蜂児が切れない、つまり育児が切れないので(幼虫に付いて生きる)ダニも切れ目ができない。問題ですね。ダニ問題を制する者が養蜂業界を制するですよ」
「頭の中は蜂のことで一杯の人ですね。そんな人に付き合うのは大変ですよ」と、裕子さんが言うほど研究熱心で情報通でもある住夫さんにしても、ダニを駆除する方法はないようだ。
栗原蜂場に到着してすぐ住夫さんが燻煙器とハイブツールを手に作業に掛かる
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