2021年(令和3年7月) 54号

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大きなテーブルに集う養蜂家たち

 旧道と交わる交差点の県道12号線に沿って影山養蜂研究所は在る。

 農家造り2階家の前は広めのコンクリート敷の庭で、いつも軽トラックが数台駐まっている。納屋の軒先に大きなテーブルが設えてあり、誰かがいつも座っている。蜂蜜を買いに来たお客だったり、養蜂道具を購入に来ている養蜂家だったり、蜜蜂の飼い方を相談したり、ただ話をしたいだけの顔見知りの寂しがり屋だったり、男だったり女だったり、若かったり年寄りだったり、たまには外国からの客も混じっている。何と言ってもここは養蜂情報の交差点ともいうべき養蜂研究所なのだ。

 黙って座ればコーヒーが出てくる。お菓子が出てくる。リポビタンDが出てくる。笑顔で世話してくれるのは影山佐紀子(かげやま さきこ)さん(77)。研究所の代表影山輝信(かげやま てるのぶ)さん(77)の妻だ。

 影山養蜂研究所を訪ねてきて、ただ用件を済ませて帰る客はいない。大きなテーブルを囲むように並んだ椅子に腰を掛けると、ただちにコーヒーが出てくる。白髪だが青シャツの一つ目ボタンを外して若作りの新見泰雄(しんみ やすお)さん(72)が、電気コードの付いたダニを駆除する道具を持って現れた。「使い方が悪かったんか、電圧が高かったんか、四角い枠が溶けてしもた」。どうやら影山養蜂研究所が仲介して購入した器具らしい。さっそく同じ器具を購入した知り合いの養蜂家に輝信さんが電話を掛けている。しかし、誰もまだ使用していないようで、新見さんの道具が故障した原因は分からないままだ。

 「ところで蜂は今、なんぼになったん」と輝信さんが聞く。「60(群)かな」と新見さん。「イチゴはもう止めたん」「もう止めた」。2人の会話を聞いていると、どうやら新見さんは以前イチゴ農家だったようだ。その後、イチゴの交配用に蜜蜂を借りるか購入するかするうちに養蜂に目覚め、イチゴ農家を止めて今は養蜂家になっているらしいことが伝わってくる。

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