手袋は履かないように
井本夫妻が内検をする手。影山養蜂研究所では作業をする際に
手袋を着けないように指導されている
まだちょっと遠慮がちな面が見られる井本夫妻の話を聞いているところに、松田正文(まつだ まさふみ)さん(74)が現れた。松田さんは体も大きいが声も大きい。
「元々、日本蜜蜂をやっておったんですけど、8年前から洋蜂を始めたんですわ。日本蜜蜂をやっておった時、仕掛けておいた桐の洞に蜂が入ったので、洞の底をそっと開けたらそれが洋蜂で、いきなり顔を目がけて襲って来て、バチバチ刺されて、顔はデコボコでえらい目に遭いましたわ。高校生の時にはスズメバチに襲われて、学校を1週間休んだこともありましたわ」
笑って良いのか慰めるべきなのかと戸惑いながらも、込み上げる笑いを抑えることができず、皆が大笑い。松田さんの人柄なのかも知れない。そこに岸田さんが慰めるように「たまにチクッとやられるけど、人に使われるより蜂に使われる方がええな」と、松田さんに声を掛ける。輝信さんも話に加わる。
「元々は日本蜜蜂をやっておったんです」と言う松田正文さんも影山養蜂研究所の常連だ
「うちに(養蜂の)勉強に来る人には『手袋は履かないように』と言うとるんです。やっぱり蜂とのコミュニケーションを大事にして欲しいということなんですよね。手袋を履いとると作業がしにくいということもありますしね」
「手袋履いとったら、余計刺されるな。手で巣枠を持っとると、バチバチ当たりよるけど刺さんもんな。手の体温がちょうどええん違うやろか」と、岸田さん。すると松田さんが「手袋履いとって刺されたら余計痛いわ」。
大きなテーブルを囲んで話が弾んでいたが、輝信さんから何かの合図があったのか、一斉に立ち上がって蜂場へ向かう準備が始まった。
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