2021年(令和3年7月) 54号

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幼虫をローヤルゼリーごと食べている

 分封群を入れた巣箱を運んで行った輝信さんが私を手招きして呼んでいる。蜂場下段の端に置いてある巣箱の蓋を開ける。

 「4月後半に黄金種が4枚来ましてね。それから移虫をしましてね。増やしよるんです。今、7枚ぐらいになっとるけんね。それを継ぎ箱にするように増やしていって、10月のアレチウリの採蜜をする時の強群にしておくんです。黄金種は温和しい。よう産卵するし、よう働きますね。2枚の巣礎を入れてやると、明くる日からもう巣房のようなものが出来てますもんね。触ってもね、普通だったら怒るけど、黄金種は横に逃げて行くようなもんですわ。毎日、1500から2000個の卵を産みますんで、産む時に産ましてやらないかんのでね。今年は特に良いのを送ってくれたように思うんですけどね。今年は春に長い雨やったもんで、春の採蜜はあんまりようなかったなぁ。全国的に良くなかったとは聞いとるけどね」

 輝信さんは内検をしながら、雄蜂を見付けると指で摘まんで捨てている。「ま、可哀想なけんど……」と、役に立たない雄蜂は残しておかないのだ。王台を見付けては中の幼虫をローヤルゼリーごと口に含んで食べている。ご満悦の表情だ。

 「燻煙器の煙もなるべく掛けんようにしとるんです。蜂が怒っとる時以外は使いませんね。人間がせこい(辛い)ぐらいやから、蜂も可哀想なけんね」

 雄蜂を指で潰したり、女王蜂の幼虫を食べたり、野蛮で繊細さに欠けるのかと思うと、蜂に対する心遣いは細やかである。継ぎ箱を巣箱の上に重ねる時は、自分と反対側の縁を合わせてからゆっくり手前の縁を下ろしていく。その際に何度も細かく上下させて縁に居る蜂が逃げる間を与えてから載せている。そんな作業を見ても、輝信さんの細やかさが伝わってくる。谷島蜂場での内検は1時間足らずで終わった。この日、蜜巣板を3枚だけ持ち帰って搾ることになった。

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