2021年(令和3年9月) 56号

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女王蜂は上へ上へと行きたがる

 朝のスタートは、ゆっくりだ。午前9時に作業場兼自宅を出発して、熊が入ったという若畑蜂場へ向かう。オオスズメバチの来襲対策と内検とを同時進行だ。

 初秋は、採蜜態勢を終えて越冬の準備に入る頃だが、蜂場では未だ採蜜態勢のままとも言える継ぎ箱を載せて、2段になった単箱が多い。髙橋さんの作業を見ていると、上(継ぎ箱)の単板を下(単箱)に移すのと同時に、単箱から別の巣板を抜いて継ぎ箱に差し替えている。作業の目的を聞いてみると、髙橋さん独自の考え方があったのだ。

 「女王蜂は上へ上へと行きたがるので、継ぎ箱の空き巣房に産卵させて、その巣房の幼虫が蛹になる前に、単箱で羽化して空になった巣板と差し替えて移動させると、結構、面倒で時間も掛かるんですけど、産卵が上手くいっているようなんです。蜂のなりにしてると、産卵が片寄ってしまうので、巣板を上下入れ替えてやることで、空いている巣房にすぐ(卵を)産んでくれるんですよね」

 上へ行きたがる女王蜂の習性を利用して移動の時間を少なくするため、女王蜂が居る近くに空き巣房を集中させようという作戦なのだ。

この作戦と同じ考え方なのかも知れないと思ったのが、給餌の仕方だ。巣箱に設置してある給餌箱に砂糖水を8割ほど入れた後、砂糖水を少しわざと巣枠の上にもこぼしている。

 「行き渡んないかなあと思って」と髙橋さん。如何にして蜜蜂の移動を少なくしてやるかというのは、髙橋さんの蜜蜂に対する思いやりなのだと気付いた。

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