ダニは雄蜂の幼虫に
午前中に一旦中断した内検を始めるため、燻煙器を準備する
巣箱に1枚ずつ入れてある雄蜂専用巣板(巣房の径がわずか大きくなるように巣礎が出来ていて、この巣房に産み付けられた卵は全て雄になる)から少し盛り上がった巣房の蓋をハイブツールで剥がしてみて、「これは切っても良いかな、まだ早いかな、来週でも良いかな」などと、独り言のように呟き、「蓋の先端が紫色になった時が切り時なんですけどね」と私に説明する。
赤い印の巣枠は雄蜂専用の巣板。雄蜂の幼虫に寄生するダニを
この1枚に集中させるためだ
養蜂家の誰もが「ダニを制するものは蜂を制する」と言うほど、蜜蜂に取り付くヘギイタダニは養蜂家にとって対策の難しい課題だ。初夏の頃は、ダニは雄蜂の幼虫に取り付いて繁殖し、雄蜂が少なくなる夏には、働き蜂にも寄生するようになるので、蜜蜂群の勢力を弱め、ひいては全滅させることもある。蜜蜂には大敵だ。そのため、髙橋さんはわざと雄蜂だけが誕生する巣板を巣箱に入れることで、ダニをその巣板に集中させ、幼虫が成長し、ダニが取り付いた段階で、一網打尽に退治しようという作戦なのだ。そのためには、幼虫の成長具合が大事で、雄蜂の巣房の蓋を切るタイミングが早いと、蛹の形がきちんと出来ていなくて、切ってもダニは巣房に残ってしまうためだ。
雄蜂の巣房の蓋を切って蛹を取り出し、寄生しているダニを退治する
髙橋さんは、何枚かの雄蜂枠の蓋を切ることを決めたようで、蜂場の隅で雄蜂の蛹を取り出すとビニール袋に入れた。続いて、次亜塩素酸水を雄蜂専用巣板に噴霧して継ぎ箱へ戻している。良く見るとごま粒ほどのダニが切り出された蛹に取り付いているのが分かる。「雄蜂枠を1枚(巣箱に)入れておくだけで安心できますから」と、髙橋さん。
取り出した雄蜂の蛹に寄生していたダニ
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