2021年(令和3年10月) 57号

発行所:株式会社 山田養蜂場  https://www.3838.com/    編集:ⓒリトルヘブン編集室

〒880-0804 宮崎県宮崎市宮田町8-7赤レンガ館2F

もう数年で安泰だから

2

  「平成20(2008)年には岐阜県本巣郡養蜂組合の組合長に就任して、平成22(2010)年度の事業として国の補助金を得て、うちの工場(こうば)で蜂箱を1000個作って組合員に配る事業をやりましたね。大工さんに教えてもらって木工機械も入れて、蜂箱を作れるようにしたんです。勢いに乗っていた時期でしたから、驚くような売上げがありましたね。『もう数年で安泰だから』と、言っていた矢先だったんですよ」

 孝成さんは、弟に任せたクレーン会社を手伝いに行った先で事故に遭い、2010(平22)年4月に亡くなる。

 突然、大黒柱を失った筑間家。残された600群の蜜蜂をどうするか、生き物なので、時間の猶予はない。「選択肢がなくて、お葬式の日に残された家族で、養蜂を続けると決めました」。その時に「姉が『やります』と言ってくれたんです」と、現在、チクマ養蜂の広報と販売を担当している4女の可兒優(かに ゆう)さん(35)が教えてくれた。幸代さんの胸の内では、初代・仁一さんの口癖だった「これは良い仕事や、これを続けていけばいい」の言葉が支えになっていたに違いない。

 こうして母親の幸代さんを柱として、4人の姉妹が力を合わせて父親の想いを受け継ぐことが決まった。

 「苦しまずに亡くなったのが、せめて良かったのですかね。若い頃はハンサムでしたよ」と、幸代さんが夫・孝成さんを懐かしむ。

 そうと決まれば早かった。2010(平22)年5月には、幸代さんを代表にしてチクマ養蜂を立ち上げ、蜂場の管理は3女の筑間美穂(ちくま みほ)さん(46)が担うことになった。長女は皆をサポート、2女は父親が叔父に任せたクレーンの仕事を継続して行うことになる。子ども達の決断が早かったため、毎年出品していた岐阜県はちみつ共進会の出品に穴を開けることもなく、チクマ養蜂を設立したばかりの2010(平22)年にも「トチ蜜」で金賞の東海農政局長賞を受賞している。

1
3
2
4
5

▶この記事に関するご意見ご感想をお聞かせ下さい

Supported by 山田養蜂場

 

Photography& Copyright:Akutagawa Jin

Design:Hagiwara Hironori

Proofreading:Hashiguchi Junichi

WebDesign:Pawanavi