オオスズメバチ6匹が蜜蜂を狙って
河川敷の蜂場でオオスズメバチを捕獲しようと捕虫網を振る美穂さん
翌朝、美穂さんが「近くに黄色い花が咲いているので様子を見に行きましょう」と誘う。国道157号線沿いの電柱の周りに、少しだがキバナコスモスが群れて咲いていた。蜜蜂が数匹、蜜か花粉かを採りに飛び交っている。
「うちの蜂かなあ」と美穂さんが呟く。「キバナコスモスは、去年もここに咲いていたのかなあ。でも、気になったのは今年初めて」。ようやく美穂さんに、身近な自然の変化に気付ける気持ちの余裕が生まれたのかも知れない。
根尾川河川敷の蜂場で餌は足りているか、卵は順調に産んでいるかと内検する
この日の内検は、チクマ養蜂の工場近くを流れる根尾川の河川敷にある蜂場だ。国道157号線から河川敷へ降りていくと、目の前に鮎のやな場があり、その奥に木立を境にして左右2か所の蜂場がある。左側の蜂場で、スズメバチ来襲の状況を確認する。
「今年、スズメ(バチ)は少ない方なんで、長雨が多いじゃないですか、来ますけど、数は少ないと思います。オオスズメバチは外から(餌を)捕ってなり立っているんで……。長雨だと少ないように思います」
花粉は採っているか、卵は産んでいるかと、内検で巣板を点検する
話をしながらも、美穂さんは捕虫網を振ってオオスズメバチを1匹、1匹と捕獲していく。一瞬、美穂さんの動きが止まった。「これ、(オオスズメバチが仲間に)信号を送ってやり始めなんで……」と、1匹のオオスズメバチを見ている。美穂さんが言葉を発しているのと同時に、2匹、3匹と増えていき、その内にオオスズメバチ6匹が蜜蜂を狙って巣箱前で飛び始めた。「すごい量やね」と、美穂さんがため息を付く。でも、ここで諦めることはできない。捕虫網を振って1匹を捕獲し、粘着性のネズミ取りシートに貼り付けて巣箱の上に置く。粘着シートに貼り付けられたオオスズメバチは逃れようと藻掻(もが)くが、藻掻けば藻掻くほど粘着シートに捕らわれていく。何らかの信号を発しているのか、藻掻くオオスズメバチを助けようと近寄ってきた別のオオスズメバチも、粘着シートに捕らわれて藻掻き始めることになる。しばらくすると、オオスズメバチの不気味な羽音は聞こえなくなっていた。
ビニール袋の周辺を切って与えた餌の花粉に群がる蜜蜂たち
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