2022年(令和4年1月) 58号

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60年間使うとる巣箱もあるんよ

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 広々とした長瀬蜂場には、15トントラックの荷台がすっぽり入る傾斜した四角形の凹地が作ってあって、そこにトラックをバックで入れると、荷台と地面の高さがぴったり合うようになっている。午前8時、荷台一杯に積み上げた巣箱の荷綱をほどき、林に囲まれた蜂場の端から順に継ぎ箱を載せて2段重ねになった巣箱を並べ始めた。2段の巣箱を腰に乗せて背負うように運ぶ者、体の前で抱くように運ぶ者。手伝いの人びとは毎年来ているのか、太平さんから特に説明らしきことはなかったが、黙々と巣箱を運んで並べている。太平さんは皆が運びやすいようにトラックの荷台後方へ巣箱を移動させながら声を掛けている。「なるべく下向くように、下向くように置いてあげて」。誰かが悲鳴を上げる、「こりゃ重い、めちゃくちゃ重い」。「最後はね、(蜜が)入ったのを(蜂が)喰っとらんから、重いのもあるかもね」と、太平さん。トラックの荷台で巣箱を移動させている太平さんを何枚も撮影していると、誰かが「密着(取材)か」と声を掛ける。太平さんが「朝起きて、そのまんま」と答えている。

そんなやり取りの中からも、毎年恒例の行事を手伝いに来ている人たちとの親しさが伝わってくる。

 「60年間使うとる巣箱もあるんよ。きっちり防腐剤塗っとるから。太平さんは、そこらへん几帳面やから」。古くから付き合いのある同業の養蜂家が教えてくれた。

 「(北海道で)木曜日の朝、(巣箱を)積んだから。継ぎ箱を載せた巣箱400(個)を何とか4人で、運転手さん入れて5人で積んだ。新日本海フェリーには(蜜蜂が外に出ないように荷台全体に掛けている)網の下を止めるようにテープを巻けと言われて……」と、太平さんが北海道で巣箱を積み込んでからの様子を説明する。

 「岐阜で(例年)6月10日頃まで流蜜があるので、それをギリギリまで採って、そうすると北海道のアカシアが6月10日から20日の間に花がワーッとくる(咲く)ので、それが7月頃まで採れますので、それに合わせて北海道へ移動させます。北海道からは11月初旬に岐阜へ移動させて、ここは雪が30㎝ほど降るんで、雪を避けて三重県や岐阜県内の雪が降らない所へ移動させます」

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