2022年(令和4年1月) 58号

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夫はスルメイカなので

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 「蜂を見に来て嫁になったと言われてます」と、自己紹介するのは妻の千草さんだ。

 「私の伯父が蜜蜂を飼い始めたことがあって、父も誘われて始めたんですけどアレルギーが出たために、私が代わりに飼い始めたんです。けど、結果は全滅でした。そんな経験があったためなんでしょうね。アシナガバチの巣を見た時に蜜蜂を見たいなと思って、色々な養蜂場のホームページを探したんです。その中で小森養蜂場のホームページは、蜂蜜の商品だけでなく働く人の紹介がありましたし、大野町という田舎の蜂場だったので興味が湧いて訪ねて来たんです。その日は蜂を見せてもらって、家族と一緒に昼ご飯を食べて帰ったんです。初めて訪ねて行った、その日です。そこに居る人は一緒にご飯食べればええというのは、小森家の風習なんです。次に蜂を見に来た時には、採蜜も行きましたし王台付けにも行きました。太平さんは居ましたよ。話はしましたけど、彼はシャイなんで話しが続かないんです。そのうち蜂の北海道行きがあって、私も出発を手伝いに来ていたんですけど、太平さんが出発する時に親戚の叔母さんが『太平さんどう』って言ってくれたんです。お父さんとお母さんも『良いのが来た』と思ってくれていたようなんですけど、言い出せなかったみたいです。太平さんとはメールのやり取りをしていましたので、いい人だなあとは思っていましたけど、彼の気持ちは分かりませんでした。彼はスルメイカなので、噛みしめないと味が出てこないので……。彼は、両親が私にそういう話をしているのを知らなかったと思います。8月になって、きちんと両親から話しをいただいたけど、親との協議だけで結婚を決めるのはどうかと思って、太平さんの気持ちを知りたかったけど、小森の両親は『ただ黙って、うちの人間になりゃいいんや』と言うんです。結婚がだいたい決まった時に、「養蜂家の嫁になる」と、実家の父にまず電話したんです。『面白いじゃないか』と双手を叩いて喜んでくれました。結婚して分かったのですが、小森家はプライバシーが正直まったくないような家族ですが、彼はスルメイカだし、父は3倍速の人でしたからね。宇宙から世の中を見ているような人で、大きく掴んでバンと判断していました。締める所は締める、ほかっとく所はほかっとく家ですから、忙しいけど楽しいです。蜂が巣箱でワラワラしているのとか、翅がキラキラしているのを見るのが好きですね」

 養蜂家の妻になるべくしてなった千草さんだ。母親の香代子さんは、この日、自宅裏の畑で富有柿の収穫に精を出していた。

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