2022年(令和4年1月) 58号

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交配用蜜蜂はほぼ原価

 従業員も皆、宿舎に引き揚げて陽が西に傾き始めた頃、太平さんが農家のビニールハウスに交配用の蜂を配達に行く軽トラックに同乗させてもらった。

 「父が(亡くなったのは)北海道に渡らなくなってから7、8年経っていたかな。20歳そこそこの頃から一緒にやっていました。やらざるを得んですからね。移動する養蜂家は半年半年なんで、いざ移動してみて採れれば良いですけど……。ポリネーション事業は、ほぼ原価なんですよ。ひと冬(一群)2万円で2月まで、後は日割りで3月までなんですけど、一年で2万7〜8000円にしかならないんですよ。移動の経費、(餌の)砂糖代、人件費などを考えると、ほぼほぼ原価なんです。ビニールハウスのためにはやってあげないといけんから、イチゴ農家の経費とのバランスも出てくるので、一方的に価格を上げることは出来ないですから。僕らは、蜜蜂が交配する自然の法則に沿ったやり方でやっていることをアピールしていきたいんですね。北海道の農家はその大切さを分かって、蜜蜂を必要としてくれていて、(出発が少し遅くなると)『花に間に合うんかい』と問い合わせの電話が掛かってきますしね。ああ、待ってくれているんだなと有り難いですね」

 交配用蜜蜂の届け先は、真新しいイチゴハウス。若い社長が迎えてくれた。以前に1群をハウスに入れているが、追加でもう1群入れるのだ。太平さんが先に入れていた1群の様子を見ると、蜂数が減っていることもなく順調だ。「大丈夫だね」と農園主に声を掛ける。追加の群の巣箱を抱くようにして、イチゴの畝の間を運び入れてから巣門を開けると、交配用蜜蜂の設置は終了だ。帰り際、イチゴハウスのプレートをみると「new comori 株式会社」とある。私の怪訝そうな顔を見て太平さんが説明する。「従兄弟なんです。最近になって新規就農助成金を利用してイチゴ栽培農家を始めたんで、応援してるんですよ」。

 親戚や同業者が持ちつ持たれつの濃密な人の繋がりを構成して、「社会貢献」という交配用蜜蜂づくりを支えている。

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