自分のパンに自分の蜂蜜

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 その時だ、どこからか突然、「コケコッコー」と雄鶏の鳴き声が聞こえた。すると良雄さんは胸ポケットからスマホを取り出して何やら操作し、ひと言。「休みましょうか、雄鶏が鳴いたら、休みなさいということなんですよ」。仕事時間の区切りを知らせるタイマーを雄鶏の鳴き声でセットしていたのだ。

 良雄さんが階段を降りて、1階に停めてあった軽ワゴン車後方のドアを開けると、作り付けのテーブルがパタンと出てきた。その上でコーヒーの生豆を量る。別の折りたたみ式の小さなテーブルを取り出すと、その上にカセットコンロを置いて防風楯を組み立てる。手慣れた様子で休憩のコーヒータイムが始まった。驚いたのは軽ワゴン車の荷台に全ての道具がセットされていて、いつでもどこでもコーヒータイムを楽しめる様式になっていることだ。おまけに木製ベッドまで作り付けてある。「星空観察に行った時に仮眠するんです」と良雄さん。生活を楽しむ精神に溢れている。自然の中でコーヒーを淹れる楽しみは多くの人びともやっているが、生豆を焙煎して淹れるとは、驚きだ。良雄さんが陶製の小さな円盤型焙煎器をカセットコンロの炎の上で円を描くように炙ると、パチパチとコーヒー豆が弾け始めた。小さな瓶に入った蜂蜜2つがテーブルに準備してある。

 「24グラムの豆で2杯飲めるようにやっているんです。蜂蜜を採り始めてからパン作りも始めたんですよ。色々なパンを作りますけど、蜂蜜を付けると美味しいなって思えますよね。クルミやアーモンドなどナッツ系が入っているのが蜂蜜には合いますね。この蜂蜜は去年12月25日に採れた蜂蜜なんですけど、蜜蓋が蜜巣板の3分の1出来ている時の早採り蜜で糖度は77.8度。蜜蓋が3分の1では糖度が出ないなと思っていて……、沖縄は糖度が上がりにくい土地なのかなと思ったんですよね。もう1つの瓶の蜂蜜は蜜蓋がほぼ全面に出来てから採ったのですが、糖度は80.1度でしたね。自分で作ったパンに自分で採った蜂蜜を付けて食べる。最高の贅沢、最高の幸せですよね」

2022年(令和4年2月)60号

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