蜂の仕事って地味な仕事の繰り返し
蜜蜂が巣箱の位置を覚えた後で、巣箱を入れ替える方法を毅寿さんが実演しながら伝える
続いての質問だ。「今日、(巣板)3枚で(分けて)貰ったでしょ。ミカン(蜜)を採れるまで育つんですよね」。毅寿さんが答える。「動かさないようにしておけば、蜂は長く持ちます。動かなければ蜂は長く生きますから。寒い時には寒い所に持って行って、動かないようにしておく。寒暖の差を付けてやった方が良いですよ」。別の養蜂家が質問をする。「女王蜂の翅を切るというのは、どうなんですか」。毅寿さんが答える。「その前に王台が出来ないようにしてやることが大切ですね。分封熱を冷ますには、採蜜する、巣礎を挿す、巣箱を3段にする方法がありますから。うちには300群居るけど、旧王は1匹もいません。新王だけにしていますからね」。
毅寿さんに運んでもらった蜜蜂の巣箱を入れ替える光永延吉さんは素手で作業をしていた
趣味の養蜂家たちの質問に対する毅寿さんの答えは、微妙にズレがあるようだったが、目指す養蜂の到達点が異なるのだからやむを得ないのかも知れない。毅寿さんの養蜂講座が終わる頃には、巣箱を降ろしてから1時間ほど経っていた。さっそく毅寿さんが、巣箱を入れ替える実演をして見せる。趣味の養蜂家たちも自分で注文した群数だけは、巣箱を入れ替える作業をしなければならないのだ。
宇多さんは他の養蜂家より沢山の群数を注文していたようなので、毅寿さんが巣箱の入れ替えを手伝っている。
「蜂を始めた15年ほど前には、うちのお袋が『あんた暑いから寒いから言うて、よう蜂場に出掛けよるけど、蜂蜜いうんは蜂を飼うとったら勝手に採ってくるんじゃないんかね』と言いよったけど、『そんなん言わんでくれ、一所懸命やりよんじゃけん』と言うたことがあったけど……。難しいもんじゃ。(毅寿さんと)一緒に仕事しよるだけで、色々教えてもろうて……」と、宇多さんが感謝の気持ちを伝えると、毅寿さんが「蜂の仕事って地味な仕事の繰り返しですからね」と、慰めるように相づちを打つ。
巣箱の入れ替えをしている途中から雨が降り始めた。翅を濡らした蜜蜂が飛べなくなって、巣箱の蓋の上で数匹ずつ団子になっている。趣味の養蜂家たちは自分の巣箱を入れ替え終えると、三々五々帰って行った。ビービーツリーの林の中に残った光永さんと宇多さん、それに毅寿さんの3人で、雨の中でも巣箱の入れ替え作業は終えなければならない。雨脚が少々激しくなる。3人の作業は黙々と続く。
巣箱を入れ替えている間に雨が降り始めた。翅が濡れたためと寒さで巣箱の蓋の上で動けなくなった蜜蜂たち
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