三次って蜂を育てるのに適している
日が暮れて、毅寿さんがトラックのヘッドライトを頼りに巣箱を設置する
トラックのヘッドライトを頼りに大きなイチョウの木の下にコンクリートブロックを並べ、その上に巣箱を置いていく。先ほどまで周りの山の稜線は見えていたが、今ではすっかり闇の中だ。午後7時、広島県北部の三次市(みよしし)江田川之内町に拠点を置く株式会社Beemonte代表の光源寺毅寿(こうげんじ たけとし)さん(52)は、ようやく1日の仕事を終えようとしていた。
三次はちみつ園蜂家の近くを流れる馬洗川の川面
中国山地と吉備高原の間に位置する三次市の市街地は、日本海へ注ぐ江の川(ごうのかわ)の支流馬洗川(ばせんがわ)と西城川(さいじょうがわ)及び神之瀬川(かんのせがわ)が合流する盆地となっていて、古くから山陽と山陰を結ぶ交通の要所でもある。「冬場は花がないので盗蜂が起こりやすいんですが、3つの川が合流する盆地なので朝は霧が多くて、その間は蜂の作業が出来るんです。三次(みよし)って蜂を育てるのに適しているのかな」と、毅寿さんが思い付いたように口にする。
毅寿さんが塩谷蜂場で内検し、種蜂として出荷する群れを選び出す
和歌山県の梅農家から戻っていた交配用蜜蜂の内検を塩谷蜂場で朝から始めていた。面布を被りながら毅寿さんが雲の広がる空を恨めしそうに見上げる。「天気さえ良ければね、網なんか被らなくてもいいんだけど……」。うちの蜂は温和しいよと、私に伝えてくれているのだ。燻煙器の煙を噴き出しながら、「予定通りになっていたらいいな」と最初の巣箱の蓋を開ける。「思ったより小っちゃえな。蜂児はきれいだ(整然と蓋が懸かっている)けど、(蜂数は)予定より(巣板の)2枚(分)ぐらい少ないですね」。出足は良くなかったようだ。それでも内検を進めていくうちに「すごい花粉を溜めているな。こいつは仕事しているな」と、嬉しそうな声を出す群もある。「(梅農家の)行先によって全然違うんですよ」と、一喜一憂しながらの内検だ。
群が成長すると寒さ対策で入れてあった段ボール板を噛み破って移動し、女王蜂が予備の巣板に卵を産む
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