2022年(令和4年5月)62号

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嫁に何を言われても買う

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 「この仕事を始めて、花の匂いに敏感になりましたね」と有祐さんは、10年の間に自然の変化に敏感な養蜂家体質となり、川北養蜂園4代目として充分な経験を積み重ねたようだ。しかし、蜂場での仕事振りは父親の重男さんが主導しているように見受けた。「あと、10年やってくれ」と、有祐さんがあてにしているのも頷ける。重男さんにはまだまだ勢いがあるのだ。

 「高校3年間はサッカーやっとって、髪型は前だけアイパーでスポーツ刈り、農協に入ってからはずっとリーゼント。農協に入ってからは志摩の海にサーフィンに行きよったけど、その頃はラコステの真っ赤なポロシャツ。5つ年下の妹の学校で保護者懇談会があった時にも真っ赤なポロシャツで行きました。農協に働きよってサーフィンしとるのを心配して、両親がわざわざ志摩の海まで見に来たことがあったな。あれはびっくりした。仕事を必死でするには自分のモチベーションを上げる目標が要るんですよ。若い時は車が好きで、ラリー、ダートラ(ダートトライアル)、帯広で開催されたWRC(世界ラリー選手権)は3回見に行きましたよ。ともかく車が大好きだった。今は時計が趣味。嫁に何を言われても買う。その代わり、旅行には連れていきますけどね。自分のモチベーションを上げる手段ですから……、1年間仕事を頑張ったら買う。次にはIWC(スイスの高級時計メーカー)が欲しいな。青森の下北半島から秋田へ移動して、北海道森町まで行きますけど、どこにでも行きつけの店があって、食べもんが楽しみで仕事しとるようなところもあるな。祖父の時代から青森も秋田も間借りをさせてもらっていますけど、家主さんが新しく家を建てても、僕らのための部屋を作ってくれているんです。50年くらい前からの長い付き合い。有り難いことに、いつも待っていてくれるんです。北海道は自分の土地に自分の家ですけど、どこに行っても祖父の代からの長い付き合いに助けられていますね」

 養蜂家の仕事は自然の変化に対応するだけではなく、人の絆にも支えられていると、重男さんの言葉の端々に感謝の気持ちが滲んでいる。

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