2022年(令和4年5月) 62号

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一日遅れたら大損やからな

 今ごろは、菜の花が一面に咲く青森県下北半島で採蜜の真っ最中かも知れない。予定では5月6、7、8日の3日間で荷造りをして、9日に三重県松阪市から大型10トントラックに巣箱を重量の範囲で積めるだけ積み込んで出発した筈だ。

 「大型トラックに巣箱を積み込むのは横5列、縦17列と決まっとるんで、交配用巣箱も含めて4種類の巣箱をいかに真四角に積むか、設計図を作るんです。温度が上がらんように外側に蜂が入っとる奴で、中には空箱。2日後に菜の花の採蜜群を下北半島で降ろしたら、一緒に積んできたカボチャの交配群を3トン車に積み替えて、夕方のフェリーに乗って北海道へ向かうんです。北海道で一週間ほど採蜜の準備なんかをしといて、下北半島に戻ったら採蜜。下北で菜の花の採蜜を終えて、秋田県の大館市に移動するのは6月の頭やな。下北半島からは自分たちで巣箱を運んで……下北から大館まではほぼ2時間やから。それから2週間がアカシアで……、大館が終わった頃、そこが一番の闘いやな。眠るのはフェリーの中、道南の茅部郡(かやべぐん)森町へ移動や。もう花が咲いとるんで、一日遅れたら大損やからな」

 三重県松阪市塚本町に本拠地を置く川北養蜂園の3代目川北重男(かわきた しげお)さん(63)の頭の中には、5月上旬から6月下旬まで、1日単位で移動や作業のスケジュールが詰まっているのだ。

 私が川北養蜂園を訪ねたのは4月下旬。「今の時期、メロンの交配がありまして、それ(交配用蜜蜂)を置いてきたんです。JAが農家に配達してくれるんで、僕らは運ぶだけやから……」と、北海道から三重県の自宅に帰ってきたばかりの翌朝だった。

 重男さんの頭の中では、これから花が咲く光景が描かれ、その地を辿る旅が始まっている。

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