2022年(令和4年5月) 62号

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熊は出てきて檻ごと引っ張って

 「広場」蜂場で続く合同作業の基本は、女王蜂を確認してマーカーで印を付けると、その群の巣板3枚を新聞紙で包み込むように覆い、勢いの良い採蜜群から、まもなく羽化する蜂児が多い巣板を1枚か2枚移動させ、餌の砂糖水を給餌箱に少し入れてやると終了だ。後は、新たな働き蜂が誕生するのを10日間ほど待つばかりである。

 しかし、同じような作業を繰り返している中でもトラブルは発生する。

 重男さんが女王蜂を見付けて捕まえ、マーカーで印を付けようとしたら、指の間からすり抜けて逃げようとする。重男さんと有祐さんが慌てて押さえようとするが、女王蜂を潰してはならないので強く押さえることが出来ない。ついに手の隙間から飛んで逃げてしまった。「もう、居らんかったことにする」と、重男さん。女王蜂の居なくなった群は、合同するために追加する蜂として他の群に分散させるか、「蜂児のいる巣板2枚を別の巣箱に移しておくと、変成王台を作ります。僕は3週間、一切見に行かない。そうすると、もう、交尾を終えて卵を産み始めていますよ」と、重男さんが言うように新たな王台を作るのを待つ手もあるのだ。

 合同が進んだある時、有祐さんが「これでカボチャはあるな」と呟く。合同作業をしていた三重県のイチゴ農家から戻ってきた単箱群の蜜蜂は、5月の北海道でカボチャの交配用蜜蜂群と秋のイチゴの交配用蜜蜂群とに育っていくのだ。

 「5月にカボチャの交配があるんで、10トントラックで下北半島までは菜の花採蜜群と一緒に持って行くんですけどね。僕らは農家に配らないで、農協に配ってもらいます。盆が過ぎたら、4ヘクタールも5ヘクタールもあるカボチャ畑から引き上げてくるんですけど、農協の新しい職員よりも農家との付き合いは長いんで、私らの方が誰の畑というのは詳しい。夕方になると熊が出てくるし……、大ごとなんです。引き上げの終わりの方になると、草が巣箱を覆って分からんようになって、年に5、6箱ほどは回収できない群が出てくるんですよ」

 「森町の農家が東京へ出荷しようと思うたら、朝3時起きで爆竹ならして、畑に入ってカボチャやトウモロコシを収穫しなくてはならない。これまで熊は出なかった所まで、ここ5年くらいで出るようになりましたね。保護、保護と言って、熊を捕らんようになったから、余計に出るようになったと思うんです。それで、巣箱を囲う檻を農協が作ってくれたんですけど、熊はやっぱり出てきて檻ごと100mも引っ張って……、巣箱は大丈夫なんだけど中の巣板は壊れてしまいますね」

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