2022年(令和4年7月)63号

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アカショウビンが屋根に

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 勝手口の土間で蜂に刺された痕を手入れしている時だ。「ヒューン」とごく近くからアカショウビンの鳴き声が聞こえた。「ここで繁殖していますから、最近は島でもドジョウ、メダカ、オケラ、イトトンボなんかの姿を見かけなくなりましね。蜜蜂は自然環境の指標だと言われているので、せめて蜜蜂を増やそうと思ってプロジェクトを立ち上げましたけどね」と和良さんが話しているところに、冷たい飲み物を運んできた妻の孝子(たかこ)さん(74)が、声を潜めて「アカショウビンが屋根に……、そっと来て……」と忍び足で伝える。大慌てで和良さんと私、居間へ入り、孝子さんが指差す窓の外をガラス戸越しに見ると、5mほど先の屋根の端にオレンジ色のアカショウビンの姿がある。私は音を立てないようにゆっくりカメラを構えファインダーを覗く。その瞬間、アカショウビンが動いた。ピントを確認する間もなくシャッターを押す。次には、アカショウビンの姿は無かった。シャッターが一瞬遅れたように思えた。「撮れましたか」と孝子さんが、心配そうに私の顔を覗き込む。「ニホンアオガエルを中庭で復活させたら、ここに来るようになりましたね」。和良さんが誇らしそうだ。

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