2022年(令和4年7月)63号

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5年目にして初めて入った

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 自宅での仕事がひと区切り付いた時、「一番遠い蜂場へ行ってみますか」と、和良さんが誘ってくれた。焼火山(たくひやま・海抜452m)の中腹にある焼火神社駐車場近くの道路脇に待ち箱が置いてある。

 「ここに(待ち箱)を3つ置き始めて5年になるんですが、今年初めて1つに入りましたね。この付近は神域植物群があるので蜜源は豊富ですからね。5年目にして初めて入った貴重な群ですな」。和良さんが嬉しそうだ。

 しかし、和良さんは軽トラックの運転席から確認するだけで降りる気はなさそうだ。駐車場から徒歩15分ほどで国の重要文化財に指定されている焼火神社の社殿があるらしいが、私は言い出せない。和良さんは西ノ島の南側を半周する曲がりくねった山道を西から東へ走って帰路に着いた。森の中を30分ほど走って、ようやく東側海岸近くまで下りた所に中国電力の工事車が止まって道を塞いでいる。作業服の工事関係者が和良さんの軽トラックを見付けて近づいてきた。「すみませーん、電気工事中なんで引き返してください」と簡単に言う。驚いた。引き返すということは、再び、山道を30分ほど走って、島の西側へ行けということだ。途中に近道はない。工事車を動かして脇へ寄せれば2、3分で済むことではないか、「冗談じゃない」と、私は思った。しかし、和良さん、ひと言も不平を言うことなく黙って軽トラックをUターンさせると、先ほど通ってきた山道を戻り始めたのだ。人間の出来が違う。

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