2022年(令和4年7月) 63号

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生息調査から始め一群から増やす

 「昭和30(1955)年代までは、西ノ島でもニホンミツバチの養蜂をしていましたね。私が子どもの頃は普通に、そこいら辺に蜜蜂はいましたからね。子どもの頃から動植物が好きなんですよ。今も、ウコッケイ中心に100羽ほど鶏を飼っていますよ。ニホンミツバチが西ノ島にわずかに生き残っていると分かって、増やしていくためには種蜂が必要です。それで効率良く種蜂を捕獲するために生息調査から始めたんですよ。平成20(2008)年頃から古老への聞き取り調査や野性群の生息調査、訪花調査、3月4月には蜜ロウを燃やして反応の調査もしましたね。最初の一群から増やすためにキンリョウヘン(花の匂いに寄せられてニホンミツバチが待ち箱に入ると言われている蘭)が分封の時期に合わせて花が咲くようにするため、温室で育てて5年掛かったですよ。ハウスで加温しないと、分封の時期に花が咲かないですから。キンリョウヘンは東南アジア原産で明治時代に日本に入ってきていますね。ニホンミツバチのDNAが分封の時にしかキンリョウヘンの匂いに反応しないんです。和蜂復活プロジェクトの賛同者を募り、私が増やしていたニホンミツバチを巣箱付きで無償提供したんです。年1回は拙宅で総会を開催して、蜂の飼い方の指導もしましたね。蜜蜂は島の植生を守るためのポリネーターとして大切な役割を担っている訳で、島の植生を守るためにも復活させなければならないと……。それに島の和蜂は、人間の手によって滅ぼされたんですから、人間の手で復活させてやらなければと思ったんです」

 「和蜂復活プロジェクトだけでなく、子ども会を作って活動しました。海洋クラブ、自分の子どもと地域の子どもを一緒に育てれば良いと思っていましたから……。菊作りの講習会もやって、隠岐郡で人が住んでいる4つの島を全部回りました。菊は300鉢作っていましたから。実の生る木も色々ありますよ。アンズ、ミカン、クリ、柿は良い蜜が採れますよ。それにビワ、冬の間に花が咲きますから……。こっち(隠岐諸島)の冬は、対馬暖流に洗われていますからに、雪が降っても5、6センチ。西洋ミツバチが活動するには10℃以上と言われているけど、和蜂は6℃あると、梅の花に蜜を集めに行きますよ。和蜂の蜜を採っているのは、知夫(村)で2人、この島で2人、海士(町)の人が多いですね。私は子どもや孫や隣近所の皆さんに配ります」

 和良さんが始めた和蜂復活プロジェクトの原点には、島への愛情はもちろんだが島で責任ある立場を過ごした者の潜在的なリーダーシップがあると思えた。

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