2022年(令和4年8月) 64号

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引用・農環研ニュース

 蜜蜂の死と農薬との関連記事をインターネット上で調べていると、少し古いが2014年11月の「農環研ニュース No.104」の研究トピックスに「ネオニコチノイド系殺虫剤の話」という題で(独)農業環境技術研究所・有機化学物質研究領域の石坂眞澄氏が執筆した記事が見つかった。できるだけ忠実に要約抜粋し、引用という形で紹介させていただく。

1)ミツバチ“へい死”の原因究明

(独)農研機構(畜産草地研究所)と(独)農業環境技術研究所が調査した結果、夏季に北日本水田地帯で発生している、巣箱周辺でのミツバチの“へい死”の原因は、水田で斑点米カメムシ防除のために散布される殺虫剤に暴露された可能性が高い。ここでいうミツバチのへい死とは、巣箱の出入り口前に死亡したミツバチが山のように積み重なる現象をさし、いわゆるCCD(蜂群崩壊症候群)とは異なるものです。

2)ネオニコチノイド系農薬とは?

海外の企業が開発した殺虫剤の候補物質ニチアジンは、光に弱く実用化しなかったが、日本のある企業が関連化合物の研究を続け、全く新しい殺虫剤イミダクロプリドを開発し、1993年に発売を開始した。このイミダクロプリドは植物に散布すると根や茎葉から吸収され、特にカメムシ目の昆虫に高い効果を示す。カメムシ目には、カメムシ、ウンカ、ヨコバイ、カイガラムシ、コナジラミ、アブラムシといった吸汁性の重要害虫が多く、全世界で使われるようになった。

イミダクロプリドは、神経伝達物質の一種である「ニコチン性アセチルコリン受容体」に結合することで、正常な神経伝達を阻害します。この作用特性から、類縁構造を持つ殺虫剤を含めて「ネオ(新しいの意)ニコチノイド系殺虫剤」と呼ばれるようになりました。ネオニコチノイド系殺虫剤の人に対する毒性は高くありません。現在、農薬登録されているネオニコチノイド系殺虫剤は7剤あり、そのうち6剤は日本で開発されたものです。

3)ネオニコチノイド系殺虫剤の水田での利用

水稲が出穂し実り始めると、周辺に生息していた吸汁性のカメムシ類が水田に侵入して、籾から吸汁します。吸汁痕は変色して斑点米となり、米の等級に影響します。収穫した玄米中の斑点米の数が0.1%を超えると1等米ではなくなって価格が下がってしまい、場合によっては収量にも影響を及ぼすことから、水稲の出穂期以降に殺虫剤を散布するようになりました。斑点米カメムシ防除の難しさは、カメムシ類が水田で増えるのではなく、周辺から侵入してくる点にあります。

今回の調査では、へい死したミツバチやへい死がみられたミツバチ群が集めた花粉団子から、ネオニコチノイド系殺虫剤だけでなく斑点米カメムシ防除に用いられる他の殺虫剤成分も検出され、水田で散布される殺虫剤がミツバチのへい死の原因となった可能性が高いと考えられました。(以上、引用終わり)

 引用させていただいた石坂眞澄氏の記事のまとめは、殺虫剤を使わない方向を推奨するということではなく、「殺虫剤の影響を緩和するために、蜜蜂が水田で殺虫剤の暴露を回避するための技術の開発が重要と考え、代用花粉を利用して蜜蜂が水田に近づく機会を少なくする技術を検討している」とある。広い意味で国の機関である独立行政法人が発行しているニュース記事なので、国が承認している農薬を否定する方向性を望むことはできないだろうが、農薬と蜜蜂のへい死の因果関係を調査するならば、水田の中だけの問題として捉えるのではなく、散布の際に周辺へ飛散する農薬の影響も考慮すべきではと思えた。

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