人と会うのが好きな性分
粘土を練る「真空土練機」で人工花粉を作る事業を始めると新品を購入した
「蜜蜂の飼い方も時代に合った飼い方があるんですよ。将来を読んで先へ先へとやっていかんと、時代に置いていかれるようになってきた。それに追い打ちを掛けるようにコロナ禍。それで、昨日、人工花粉を作る機械を買うてきた。これからは温暖化が進んで、日本には四季があったけど、これから二季になって、フクラシやクリの蜜が入りよったのが……、その夏蜜が入らんようになった。わしらが若い時分は、朝と夕との気温差がありよったけど、今は夜が温(ぬく)すぎる。ナツメが蜜を噴かんようになった。以前は、分封したんじゃないかと思うほどに蜜蜂が寄って来よったんですよ。それが今年は一匹も来ん。6月に採密を終えたら女王さん作りに入ったんですよ。韓国では寒いのに一所懸命で蜂を育てる。韓国では真空土練機という粘土を練る機械で花粉を作りよる。それで、わしが100万円で真空土練機を買うたんじゃ。あれで花粉を作って日本の蜂屋が蜂を増やさないかん。
登り窯へ上がる入口のナツメの木が実を付けている
誰かがせんと、一人じゃ前に進まん。何十年も蜂ばっかり飼いよったから……。わしみたいに前向きな人はそうは居らんよ。人と会うのが好きな性分で、それで『蜂屋の巣』という看板を作ったんや。蜂屋の皆が集まって来るという意味なんじゃ。今年6月末からずーっと女王さんを作ったんですよ。移虫して80%が新王になったんじゃから。夏は(新王は)でけんと皆言うんですけどな。花粉と餌(砂糖水)はやったんですよ。それで出来た。10月には良く出来るんですよ。セイタカアワダチソウが咲くからな。あんた、この記事書いて、養蜂家の皆に来て欲しいという気持ちを伝えて欲しいんじゃ。わしが蜂屋さんを回って歩きたいと思うとるんじゃけど、金儲けじゃと思われると、誰も自分の蜂は見せない。わしはそうじゃないんですよ。早よせな、いよいよ、わしも順番が来とる。組織を作らんと前に進まん。蜂屋さんを集めて、わしも勉強したいんじゃ。そういう場が絶対必要なんですよ。ま、一歩、足を前に出すことですよ。だけど、面白いような気がする」
御年85歳の田中常雄さん、とにかく前向きだ。
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