蜂のことを考えとるのは楽しい
裏山の竹林に囲まれた蜂場。スズメバチの捕獲器は常雄さん手造りで独特の構造
常雄さんはどうしているかと自宅へ様子を見に行くと、案の定「ま、上がって、茶を飲んでからじゃ」と、人懐っこくお茶に誘ってくれる。今度は断れない。さっそく常雄節が始まる。
「寝とっても蜂のことを考えとるのは楽しいんですよ。昔は、餌(砂糖水)をやる銭がのうての……。蜂は催促せんから少しずつ分けてやってると、結局は足らんのですよ。そうすると蜂は無理して蜜を探しに行くんですよ。初冬から暮れに咲くビワの花に行くんですよ。雲が掛かったら体が冷えて飛べんようになるんですよ。それで、雲が通り過ぎて太陽が顔を出すと、又、暖かくなって巣箱に戻ってくるんですよ。それだけギリギリの状態で餌を採りに行ってるんですよ」
田中常雄さんが登り窯上の裏山にある竹林に囲まれた蜂場を案内しながら内検をする
さすがに蜜蜂と付き合って70年。観察は細部にわたり、蜜蜂の心情を読み解いている。しかし、常雄節の話題はいつしか、前日届いたばかりの真空土練機に戻っていくのだった。「一緒に蜂場へ行きませんか」と誘ってみるが、常雄さんの腰は上がらない。やむを得ない。明朝一番に、真空土練機の試運転を見せてもらうことを約束して、この日の取材は早めに終えた。結局、常雄さんの写真は、蜂場を案内してもらった時に撮影しただけで、実質的な仕事は何もなかった。明日は仕事をしてくれるのだろうか。不安が胸を過る。
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