2022年(令和4年9月) 65号

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人生の9割9分は終わったけど

 翌朝、約束の9時に倉敷田中養蜂場を訪ねる。案の定というか、真空土練機の試運転は終わっていた。

 「前の機械は攪拌していたけど、今後の機械は練っとるんですよ。それに真空ポンプで空気を抜いてくれるんですよ。今度の機械はええような気がする」

 常雄さんは真空土練機を試運転した感想を伝えながら、プシューと土練機の真空を解除して蓋を開ける。

 「長年蜂飼いをしてきて、これは画期的だよ。「花粉練り機」と名前を付けないかん。こんなになるとは知らなんだ。粘(ねば)い、粘い。前向きに人と出会い、新しいこと、新しいことに挑戦する人生。それが楽しいんですよ。90歳前になって、来年、来年という人生を送る人は珍しいじゃろな」

 常雄さんは、真空土練機の効果が想像していた以上にあったことで、ともかく上機嫌だ。

 「わしの年になると、みんな、もう、死によるんじゃから、生きておるだけでも感謝せないかん。蜂屋の巣ですな、蜂屋の巣。蜂屋が皆、ここに集まって来りゃええんじゃ。人生の9割9分は終わったけど、残りの人生を元気で楽しい時間を過ごしたいな」

 「花粉練り機はなかなか良いよ。人生が開けてきたよ。きな粉とビール酵母と塩、それに砂糖水を入れんと固まらんのよ。ビール酵母の粒子をうんと細かくしないと蜂の口に入らんのですよ。これを今から研究するんですよ。酵素がええちゅうことなんじゃ」

 常雄さん、ここで急に顔を輝かせて語り続ける。

 「これが成功したら、優秀な人工花粉が充分にあって、巣箱の中を活気のある春みたいな状態にしておくと、冬でも女王が産卵しやすくなるから、そして春に強群を作って、蜂蜜を採るとええんじゃ。大事なところを教えたらな、相手も腹割って出てくるんじゃ。自然花粉はキロ3000円。蜂の数が多かったら買い切れん。わしら、経営しよんじゃから。自然花粉が一番ええんじゃと皆思うとるんですよ。でも、うちで作る人工花粉の方がええ物ができる可能性があるんじゃから。発酵食品は体にええんじゃから。死ぬ蜂は死ぬと……。生きとる蜂だけでええ、蜂がよおけおれば、それでええんじゃから。ダニなんかは、もう相手にせんと……。ダニが住みにくい蜂にすればええんじゃから、まあ、銭を儲けようと思って一生忙しいこっちゃわ」

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